昨日のばあちゃん、興奮ぶり

 昨日は何だったのだろう?ステイから帰るなり、なにやら怒ってぶつぶつ言ったかと思うと、さっさと部屋に行った。
 私はスタッフと話していた。「寒くなりましたが、どんなものを着せたらいいでしょう」と訊くと「もう暖房に切り替わっていますから、朝夕が寒ければ暖房します。普通でいいですよ」とか、話していて、部屋に見に行くと、布団にもぐって寝ていた。「昼から怒っていて、着替えてくれません」と言われたが、ステイの服のままだ。薄い肌色ポロシャツにジャージというよりパジャマズボン。施設の見学者にこのかっこうを見られたくないな。ぼけたら身なりでごまかしたいよ。見るからに「ぼけばあさん」なんて情けないよ。
 夕方、起きてきたら、白いかっぽうぎを前後逆に着て前で紐を結んでいた。!これは笑える。見た感じが変てこりんだ。着かたを忘れたかな?パジャマズボンらしきものの上に、出しておいたもんぺをはいているのだが、これは裏返したままだ。はく前に表か裏か、なんて確かめなかったようだ。
 顔を洗って「お経をあげ」と言うと、廊下を歩くのが変だ。忘れたようにぎこちなく、手で壁を探って歩いている。体で覚えた感覚が消えたかな?
 晩ご飯にすると、がつがつがつ、欠食婆さんだ。そうか、いつも帰ると着替えておやつにするもんね。今日は食べずに寝たから、かなり飢えている。昼ご飯から夜までは持たないのだ。
 風呂がすんで「寝なさい」と言うと「はい」と言うが、立て続けに5回、起きてきた。しまいについて行って「寝るまで押さえとこうか?それとも、紐でくくるか?」と訊くと「寝ます」と言う。本当に寝てしまった。助かった。
 あとで思い出したが、帰ってきたとき「こんなとこ、来て、なんになる?」と言っていたようだ。自分の家に着いたとは思わなかったのだろう。それにしては、すいすい入って行くのは変だが...ま、深く追求しないでおこう。
 ばあちゃんにとっては「ステイのななくさが家」だから「家に帰るから着替えて」と言われても、何のことかわからず、混乱するばかりだ。「車でおでかけしましょ」と連れ出して、しばらく乗り回し「あ、家に着きましたよ」と言ってみるとどうだろうか?「帰る、と言わないで、行く、と言ってみて」と提案すると、送りスタッフ君「なるほどね。それ、やってみたことがないけど、試してみましょ」と言う。