新築祝い

 まず、ばあちゃんは行くときの車の中で「ようけ、車、とおっとるなぁ」の繰り返し、街中に行くと「おおきい家やなぁ」マンションだ。
 リビングのテーブルに行き、低い椅子を出してもらって腰かけた。すると、ご馳走の寿司桶やオードブルが丸見えで、食べる、食べる。まず、お寿司を4個入れてやると「けっこでんなぁ」と言いながら、すまし汁も飲むし、食べ終わった。えびフライとか、野菜のてんぷら、野菜の煮物などをのせてやる。すごい食べ方をする。お皿の醤油を指につけてなめたり、お皿を持ってお皿についたご飯粒をなめたり、箸を握って湯呑みを持ったり、煮物を手づかみで食べたり、とにかく家ではやらないことをする。湯呑みを横にのける、残ったしょうゆをふきとる、箸を持たせる、など対処法はある。それで行儀良く食べられたらよいではないか。
 途中から、まだお皿にあるのに「それ、もらおか?」と催促するようになった。「今、あるのを食べたら入れてあげる」と言って、食べさせた。一つだけ入れたら文句を言うので、野菜なら3つぐらいのせてやる。大工さんが「ばあちゃん、大丈夫?おなか、痛くなるよ」と言うぐらい、どんどん食べる。私も、何度も入れたのでしまいにどれぐらい食べたか、わからんようになった。「もう、片付けよう」と言って料理はなおした。
 次に「フルーツ」ラ・フランスが出てきた。甘くておいしい!高価な物を!!ばあちゃんも柔らかいので、どんどん食べる。これも「片づけ」私が持って行った小さな饅頭も1つ持たせて「片づけ」個別包装のクッキーが出てくると「それ、もらおか?」見えているかぎり言うので、これも「片づけ」すると、ばあちゃんはとんでもないことを言った。そのときは「おぅ」と思ったのだが、書いておかなかったので、忘れてしまった。あかん、あかん。こんな時はメモしておかねば忘れてしまう。残念。
 先に食事を終えた子ども達が3階に上がり遊んでいたが、時々、ドンドンドーンと駆け下りて来る。変形階段だが、すごいスピードの2段飛ばしもやってのける。ばあちゃんはその度に「ほぉ〜!」と言う。子供にはとても興味がある。 
 朱鷺さんは、リビングのマッサージチェアをお試し。○○電化の大売出しで買ったそうだ。「すごいねぇ。高いでしょう」と言うと「定価は「40万円」だそうだ。半額以下で数量限定だったそうだ。背中から足まで部分ごとにビニールバッグがあり、それぞれに空気を送ったり出したり、それで袋が膨らんだり縮んだりして、身体を圧迫したり放したりするしくみだ。「気持ちよい」のだそうだ。肩こりは大工さんの職業病で、毎朝起きるとマッサージが日課だそうだ。私は百姓をしても、肩こりにはならない。してみると、私の方がずっと「さぼり」だ。マッサージチェアの他には、階段の一番下の天井に「ぶら下がり健康棒」がつけてあって、実演してくれた。  
 ばあちゃんは食べ物が目の前から消えて、することがなくなったので朱鷺さんの奥さんのかばんを見て「それ、私のかばんか?」と訊く。「違うよ。かばんは持って来てないよ」と何度か繰り返し、かばんは隠す。次は右手を伸ばし、電話台から丸いケースを取り出し、ファスナーを開ける。それはお化粧品だった。「ばあちゃん、おやつ、探してるみたいね」と皆で言いながら見ていると、何度も繰り返す。またまたケースも隠す。ばあちゃんは触る物がなくなったので「おしっこ」に行く。それをしおに「帰ろう」と言って、2時過ぎに出た。帰りは大阪空港の横を通るので「ばあちゃん、飛行機、見よう」と言って、空港玄関を通ってくれた。飛行機の尾っぽが見えた。また「車」「おおきい家」と言いながら帰った。
 乗せてもらったおかげで、新築祝いに行けてよかった。