これが病気なんだ

 今年はおとなしい、畑に行きたがらない...と言ったとたん...
 私が1時に来た人に葉牡丹を引いてあげていると、突然ばあちゃんが畑に上がって来た。あれま、もう来たの?
 その客は葉牡丹を大きな袋に入れたあと、珍しそうに畑のあちこちをみまわって「広いなぁ」と感心し「年末に飾りの松の枝をもらいに来てもええか?」と言う。「ええけど、山に入って、猪のわなにかからんといてよ」と言うと「あちこちにわなをかけてあるから、怖いな」と言う。猪が沢山いるから仕方が無い。誰でもが、わなを掛けるわけではない。講習に行って試験を受け、合格して免許をもらわねばならない。鉄砲撃ちの免許はまた別にある。取る人は勉強しているのだから、この狩猟の時期には、普通の人が他人の山に入るのをやめてもらいたい。
 その客は2時に帰った。「ばあちゃん、寒いよ。帰ろう」と言いに行った。「留守番して、と言うといたやろ?」と言うと「はい」と言うが、すぐに出て来るのだ。何もこんな寒い日に行かなくても、また暖かい日も来る。
 帰りはのろのろ歩く。「腰が痛い」と言う。「伸ばして」と言うと、のばすことはできる。勝手なときは速く歩ける。多分に精神的なものだ。杖をついていると「腰が痛い」とは言わないのでいつもは持たせている。「ばあちゃん、勝手に来て、杖を忘れたから、腰が痛いのや」と難しく言うと、理解できない?か、黙った。
 家に着いた。すると今度は廊下の徘徊だ。ドアノブをがちゃがちゃ、壊さんばかりだ。「つぶす気か?手を切って、ほってしまうよ」とおどす。友達に聞いた話では、ほんとにドアノブが壊れたそうだ。また、先輩の話も思い出す。「うちのばあちゃん、要介護4よ。あんたんちの先を言ってる」それを言われて、いい気持ちはしないもので、実際、べつの友達は「うちは、あんたんとこのあとを追い掛けへんわ。ぼけへん人かて、おるわ」と言い返したそうだ。
 そうだった。「これ!」が病気なんや。「昼からの時間が落ち着かない」まさに「これ」が病気だ。「認知症」として「理解力」が劣るが、それにつれ、午後になると精神不安定になり「どうしていいかわからない」「怒る」「うろつく」これがばあちゃんの症状だ。それに気がつけば、対処法も変わってくる。