私の友達の家を見に行く

 ここで、友達に電話をすると在宅だったので、ばあちゃんにも上着を着せて大工さんのワゴン車に乗り出発。ばあちゃんは後部座席で一人だが、慣れているので「おぅ〜、ようけ、車やな」と言いながら乗っている。
 JR西宮名塩を基点として開かれた住宅地は、たくさんあるが、元が山だったり、田畑だったりで「○○台」とつくものが多い。友達の家もそうだ。南向き斜面なので、生活道路にはガレージを作り、家は一段上だ。玄関にたどり着くには急な階段を上らねばならない。ばあちゃんが「だいじょぶかな?」と言うのは口癖だが、これは本当に不安になる。お隣の家と共同の階段かというと、そうでもなく、真ん中に区切りがあるのに、手すりは無い。お隣の家は自分の家の部分の壁に手すりをつけているが、友達の家には無い。何も持つ所が無い。若いときにはこれでいいが、友達もお母さんが来たときはどうしているのだろう?ばあちゃんは?持ってきた傘を杖にして、一段ずつ上った。賢い!雨が降っていたから、私が傘をさしかけた。
 上の家に着くと、傘立てに傘を入れ、さっさと戸を開け、上がり口で横向けに靴を脱ぎ「はいらしてもろてもよろしぃか?」と上がって行く。デイサービスと思っているから平気さ。ダイニングテーブルにちょこんと座り、お茶をいただきます態勢。「熱いよ」と言うと、先にクッキーを取り「おぅ〜」と言い、一口食べては「おいしぃです」次にお茶を飲み「熱いです」さっきは熱いよと止めてあげたけど、言わなかったらそんなもの。しゃべるか、食べるか...友達は、うちの畑に来たときに何度もばあちゃんにあっているし、だんだんぼけたことも知っているから、今はこんな調子か...と思いながら見ている。「こうやっていられたら、いいね。でも、一日中、しゃべっていたら、聞いているとつらいかも...」と言う。そんな、一日中、しゃべっていられたら、こちらがもちません。
 友達の家は南向きだ。日当たりはとても良い。もらった木材でウッドデッキを作ってほしい。ついでに窓にも...移動して話をしていると、ばあちゃんは一人ほっておかれて、おとなしい。うつらうつら居眠りだったんじゃないの?
 話はまとまり、帰ることにする。今度は階段を下りる。私でも怖い。雨はやんでいた。ばあちゃんは「おばちゃんについて行ったらええかな?」と言いながら、左手で私の右腕をつかみ、右手は傘を杖にして一歩一歩下りた。地上を見ずに足元だけを見るのがこつ。無事におりてほっとした。
 また車に乗り「あれ、見なさい。ようけの車やで」と言いながら戻ってきた。トイレに行かせて上着を脱がせて「昼寝」と言うと寝てしまった。助かった〜。大工さんのおかげでばあちゃんも「おでかけ」気分になれたし、感謝。