火の玉

 「わかるか!」と怒りながら帰ってきたときには、いつも「トイレ行ってきて」「おやつ食べよう。待ってたんやで」と誘導するのだが、ほっておいたらどうするか実験してみよう。洗濯物を干していたら、やっぱり怒りながら帰ってきた。
 主任は「2時半からスイッチが入りました」と言われた。「あ、こんなときはばあちゃんを一人にするに限ります」と言って、冷たいようだが帰ってもらった。
 玄関で脱いだ靴を見ると、かかとを踏んでいる。怒っている時は、デイのスタッフが「踏んでいるよ」と言ってくださっても、きかないものなぁ。ばあちゃんが上がったので、ぬいだ靴を取りあげ下駄箱に入れた。これで靴をはいてまた外に出る心配をせずにすむ。 廊下を自分の部屋に行ったのを見届けて、外で洗濯物の続きを干していると、ばあちゃんは台所に来てドアをがちゃがちゃさせている。興奮はおさまらない。夫の部屋まで訊きに行ったらしく「自分の部屋におれ」と言われている。しかたない。私は裏口から入り「部屋に帰り」と言いながら連れて行く。ベッドの上に置いておいた着替えには、関心なさそうだ。「着替えて」と言って脱がせると「裸にして、どないするのんどいな!」と怒る。おぅ〜、元気、元気。着替えも文句たらたら。