「わからん」

 またほっておくと、またがちゃがちゃ。あかん。夫が「おやつ作戦にせい!」と言う。食べ終わり「部屋におって」と言うといったんは行くのだが、たちまち舞い戻り「どないするのんどいな?」「おやつ食べたから、もういいやろ!」と言うと横を向いて「そんなもん、食うてへん」と小声ですねる。おもろいなぁ〜。飲み込むと食べた事実を忘れるからなぁ。「どないします?」ばかり...
 これはもう、畑に行くしかない。えねるぎーを使わなきゃ。
 外に出たら近所の人に会った。ばあちゃんは「一緒に行ってくれる人」だと思ったらしい。私が「ばあちゃんはもう私のことを忘れているから」と言うと「へぇ?そんなん?」と言う。「だから前に言ったやん。もう何もわからないんよ。衣食住すべてがわからんのよ」と言っても、わかってくれない。想像の枠を超えているのだろう。
 トンネルの上でばあちゃんが「来て」と呼ぶ。「私はこっちよ」とその人が言うと、ばあちゃんは怒る。「どこ、行きますのん?」と言いながら畑に上がる。「何しますのん?」
 畑に着くと「みな、来とってや」と診療所の明かりを指さす。「ここに来たんや。どこにも行かない」と言うと「お母ちゃん、何しますのん?」という!うひょ!突然「お母ちゃん」と呼ばれててもなぁ〜...
 私が小屋に袋を取りに行くと「お母ちゃん」と言いながらついてくる。私が網の中に入り、中から閉めるとついて入りたいようだった。大根を引いていると、網をくぐってきた。「入るな!いのししか?」と言っても...わからんわなぁ...わからんことを言いたくなるんだよ、なぁ、ついつい。