トーンダウン

 ばあちゃんがショートステイから帰宅。今回は5泊6日だった。
 そんなに怒ってはいない。家に入り「参ってくる」と言う。仏さん? どう説明して送ってくれたのだろう。「帰ろう」?「行こう」? ちなみに家にいて、ばあちゃんが「ななくさに行く」と言うとき「何しに?」ときくと「参りに」と言う。遊びに行くなんてとんでもない。寺参りか、墓参りか、宮さんに参るしか外出が許されない「嫁」世代であったのだろうか?
 手を洗い、着替えておやつにする。おとなしくて助かる。おやつがすんで「何時?」と壁の時計を見せると「9時」と言う。短針と長針の区別がついていない。時計は読めたし「あと何分で迎えに来る」計算もやってのけたばあちゃんだった。もうできない。2時45分だ。「部屋で昼寝して」と言うと、ベッドに入った。私はその間に、外の温室に毛布をかけに行く。帰ってしばらくして、3時にはもうやってきた。台所に来て、ドアノブをがちゃがちゃする。「あかん」と 何度も叱り「ドアをつぶす気か?」と繰り返しているうち、「いつ起きる?」と言いだした。部屋に一緒に行くと雨戸を閉めていた。「こんなとこ、昼に閉めたらあかん。閉めるから暗い」と開けさせようとすると「用心悪い」と言い返す。あらま、よく覚えていたこと!「ばあちゃんを盗って行く人、おまへん。盗ってもろても、ええけどなぁ」わかりまへんか?
 テレビをつけてやる。またまた来ては、ドアがちゃがちゃ。やっとトーンダウンしたのは、もう3時45分だった。「おばちゃんと、おっても、よろしぃか」と言う。「何か用?」と訊くと「さみしいわ」と言う。「口寂しいのんか?何かあげよか?」塩味饅頭をあげる。握って部屋に行ったが、すぐに食べたか、戻って来た。