「お父ちゃん」

 またすぐ来るだろうと思い、今度はもう、台所のドアを開けておいた。鍋はストーブにかけたし、もう座ってメールを書く。ばあちゃんが入ってきた。「お父ちゃん、遅いな」と言う。は〜?お父ちゃん?そんなん、どこから引っ張り出して来たん?
 座る。テーブルの空き瓶を何度も持ち上げて見ている。「こら!」と言うといつものように「見ただけや」「持たな、わからんか?空っぽやろ?」ばあちゃんは「もう5時やのに、お父ちゃん、遅いな」と言う。あらま、4時50分。時計が読めた?今日は頭が冴えている!「あ〜、けっこやな」タイプの独り言を言わないもの。「もう10分したら5時やー。もうってけえへん」(もどってこない)と計算までする。
 そのうち「ちょっとお便所、行ってくるわ。おしっこしたい」と言いだした。あとでトイレについて行くと、電灯をつけたまま、ばあちゃんは向うの階段を上がってくる。「お父ちゃん、おってやわ」と言う。お父ちゃんの部屋まで見に行って「お父ちゃん、おってやったん?ご飯、食べよぅか?」と言ったのだそうだ。
 ばあちゃんをトイレに行かせて、手を洗わせ、お経をあげに行く。まぁ、なんとか「にょ〜にょ〜」とあげる。台所に帰ってきたときは「ありがと」と言い、お父ちゃんを忘れた。やれやれ。ご飯を食べる。入れ歯を洗う。
「着替えて寝よう」と言いながら脱がせると、両足がふくらんでいる。むくんでいる感じだ。靴下のゴムがきついのかな?動かずにいたかな?水分の取りすぎかな?紙パンツがグショグショだった。今度から帰ってきたときに紙パンツを見てやらねば...おとなしく寝てくれて大助かり。仕事がはかどった。