「お正月で休み」

 「お正月で休み」は、わからないか?昼までうろうろ。
 昼からは「迎えを待つ」態勢だ。門のところで誰かと話をしている。近所の人で、元は介護のプロだ。「行きますのん?」とばあちゃんが言うと「今日はお正月で休みやで。家でゆっくりして」と教えている。「ゆっくり」がわからないばあちゃん。「だいじょぅぶでっか?」と訊いている。「大丈夫やで」と言っておられる。「畑、行って、見てきましょか?」とばあちゃんが言う。「畑も今日は休みやで。来てもろたら困ります。遠慮します、言うてるよ」と教える。う〜ん?それはあかんやろ。畑が「遠慮します」なんて言うもんか。なんぼわからんばあちゃんでも、おかしな教え方をすると、混乱は増す。大体「困っていたら教えてあげねば」とか思う必要はない。「な〜んにもわからへん」と言っていても、相手が答えるとエスカレートする。そのうち一人であきらめるのよ。「もう〜、ええ。家に入ろ」と連れて入り、部屋に追っ払った。静かになった。
 しばらくして、従姉妹が来た。「ちょうどいいわ。話相手になって」と応接間に入ってもらう。ばあちゃんを呼ぶ。従姉妹が「おめでとうございます」と言うと「有難うございます」と返すばあちゃん!しっかりしてるやんか。あはは〜。お茶とお菓子を出す。食べ終わると、私が右横に置いていたのだが、見えるらしい。「それ、食べよか?」と言う。見せると「違うわ」そうよ、これは竹のスプーン。話はわからないので、おとなしく聞いていた。
 従姉妹が帰るとまた「行く」態勢になる。東へ帰る夫妻の手を取り「一緒に行って」と言いながら、ついて行きかける。その人たちは、ばあちゃんが認知症だとは知っているが、どの程度かは知らない。無理矢理引き剥がして畑へ行く。ばあちゃんは道の左側を歩く。私と犬は右側を行く。トンネルに来たら「お母ちゃん、こっちやで」と言う。朝から初めて「お母ちゃん」と呼ばれたわ。トンネル内は数を数えて歩く。なんで?
 畑に着くと、ばあちゃんは薮を目指す。連れ戻し、道を上がる。上の畑に着くと、ばあちゃんは箱に腰かける。私はねぎを引く。ふと見ると、ばあちゃんは大脱走!足は診療所に向いている。走って行って連れ戻す。また引いていると、ばあちゃんは猪除けのトタンに向かう。また連れ戻す。やっと草をちぎってみようと思ったらしい。「ちぎってもあかん」と言うと「鎌、持って来ましょか?」とまともな返事になった。手を洗って家に帰った。すぐに昼寝に行ってしまった。夜は起こしてご飯。またすぐに寝た。...やっぱり、8時ごろに起きて寝ぼけた。