置き薬

 奈良から「置き薬のおじさん」が来た。「前回は7月に来てます。毎年、暑いときと寒いときに来ます。そんでもこのごろは寒いのがしれてますな。昔ほど、雪も降れしません」と言われる。「絆創膏を使うてもろとりますな。『ユートクバン』はよろしぃな。これは九州で作ってます。よそのうちでも『これだけは置いて』と言われます。私も長野県に行ったら、手にあかぎれができます。爪のところがパクッと割れて痛いですわ。この絆創膏が効きます。長野県を回り終わって、こちらに来たらあかぎれ、治ります」「長野県にも行くんですか?」と訊くと「今年は雪が少のうて、楽でしたわ。むこうはスキーができひん、客が来ないんで困りますがな。若い人がスキーに来ないのは、携帯電話のせいでっせ」「なんで?」と訊くと「携帯電話にお金がかかって、スキーに行くお金があれしまへん」な〜るほど。
 それにしてもこのおじさんは、私が子供のころから回ってきている気がする。「おいくつになられました?」と訊くと「喜寿です。年末に長野県から帰ってきたら、子どもらが『喜寿の祝い』をしてくれました。そやのに、また働きに来てます」と言う。それはめでたい。「お元気ですね」と言うと「ときどき休んで温泉に行きます。芝居をやっているところに行って、芝居を見たら、心がまっすぐになります」と言われる。義理人情の世界だろうか?「1日遊べてヘルスセンターはよろしい」と弁舌さわやかだ。