誕生日のプレゼント

 5時前になった。チャイムがなり「今日はご利用ありがとうございました。お誕生日のプレゼントです」とデイのスタッフの方がわざわざ持って来てくださった。デイのスタッフは何人おられるのか、来るたびに違う方なのでさっぱりわからない。
 バースデイカードをばあちゃんに見せる。「お誕生日おめでとうございます」読んでも意味はわからないかな?プレゼントの箱を渡す。「開けて」と言うとばあちゃんは「できません」と言う。「開けて」「あんたら、よう知っとってやけど、わたし、わかりません」デイに行ってリクレーションのときにこう言うのだろう。「考えて開けて」と言ってみる。どこが紙の端か、わからないらしい。とりあえず引っ張っている。それでも力まかせに引っ張って破れば開けられるのに、それは思いつかないらしい。破ったらあとが使えないからもったいないと思うのだろうか?
 そういえば「もったいながり」のばあちゃんは若い頃、もらった物は丁寧に開けて包みなおしてよそへ持って行った。「たらいまわし」だ。私はそういうのが嫌いで「もらった物ですがどうぞ」と言って正直に言ってさしあげて食べてもらっていた。「もったいない」のは同じでも、言い方で気持ちのこめようが違うというもの。
 そのうち「できません!」と言って机をどんとたたいた。「たたくな!」「できません!」を繰り返すので「言うな!開けて!」なるほど、こうやって怒るのだ、よそに行ったときは。「できない。自分にはできない」と思い、怒る。そのとき「大丈夫よ。できる」と励ましても耳に入れない。「怒るな!」と言わないと!「ばあちゃんが怒ります」とスタッフの皆さんは言うけど、初めて怒りだしたときに「あかん!」と止めないからよ。
 何度も「開けて」と言うと、最後に止めたシールに気付き、包装紙は開けられた。紙箱がまた開かない。堅い。それも開けられた。中身が出ない! 竹久夢二の小鉢が2枚重ねて入れてあった。桜の模様と葡萄の模様だ。さっそくりんごを入れて食べてみたが、上品すぎてすぐに割ってしまいそうだ。使い方を考えよう。洗うときに気がついたが、大きさといい、丸みといい、手に収まる感じがとてもよい。