「介護びっくり日記」高口光子著 講談社 2007年

 新刊本の案内で見て「おもしろそう〜」と思っていたら、まるちゃんが貸してくれた。
 読みやすい!ちょっと第1章を引用すると
「    死ぬときには、オクサンの名前呼ぶんですね 
 やっぱり老人ホームでも、モテる、モテないはあります。
 モテないジイサンの典型は学校の先生タイプ。
 権威と肩書きだけで生きてきたっていうジイサンは、バアサンからまず好かれない。そういうジイサンは“人は常に向上心を持って、かくあるべし”みたいなことを、すぐ他人に要求する。
 『女はこうじゃなきゃいけない』『職員はこうじゃなきゃいけない』とか。・・・中略・・・
 夜中になると男はみんな寂しくなって「よしこ〜っ!」とか「みきこ〜っ!」とか、オクサンの名前を時間・場所を問わず呼び続ける。
 ヘルパーにしてみれば『出た出た、よしこ』みたいな感じ。『お父さん、どうしたの?』って行くわけですよ。
 ところが女で、自分のダンナサンの名前を呼んで死んだ人はほとんどいません。
 女の人はボケたり死のふちにあるときに、決してダンナさんの名前は呼ばない。最後は『お母さ〜ん』です。」
 
 ね、読みやすいでしょ。書くと「ブログ」スタイル。少し書いては改行し、太字も使い、視覚に訴える。また講演で話している言葉でもある。挿絵もとてもよい。
+ 老人の常識
+お年寄りパワー
+介護力って何?
+介護と施設
 高口さん、とってもおもしろいです。気にいったところだけ抜きます。
「   明治・大正生まれのジジババの怨みパワー 
 明治・大正生まれの人たちが嫁の時代には、姑に仕えて仕えて仕えまくった。
 将来この家のあらゆる権利が自分のものになると思うから、姑さんに尽くした。
 長男は長男で、父親を敬い、家を守るためにすごく頑張ってきたから、子どももそうしてくれると思ってた。
 ところが、自分が年をとったときには嫁さんのほうが強くなって、同居をイヤがるし、そして息子は『家の仕事なんかしねえよ』って家を出ていっちゃう。お年寄りにしてみれば、人生の中で積み上げた定期預金が満期になった途端にかっさらって持っていかれたようなものなんですね。
 だから明治・大正生まれの人たちは、施設に入って、すごく暴れる方が多い。
 もうなにもかも気に入らない。
施設のケアが気に入らない云々の前に、時代が気に入らないっていうか。
 唾を吐くわ、暴言を吐くわ。廊下がまっすぐなだけでも気に入らないようです。
 いまはもう昭和一桁世代のお年寄りも多くなりましたけど、明治・大正生まれのジジババに比べるとなんだか、ボーッとしてる。
 明治・大正生まれのジジババは、すごくパワーがあるんですよ。
 “こんなはずじゃなかった、ふざけんじゃねえよオマエら、いったいなんだったんだ、オレたちは!”みたいな。溢れるようなエネルギーがあって、人生に対する不納得みたいなのがもう、ガンガン出てきておもしろいくらい。」
「   18歳Vs.103歳 
 介護施設っていうと、なんか心やさしい、お年寄りが大好きという天使みたいな人が働いていると思うかもしれません。
 そうじゃないんですね。最近多いには『こんちはッス、やるッス』みたいな新人さん。
 一般企業とか、そういう業績を競い合う業種からの、いわゆる就職戦線とは別コースからやってくるんです。
 鳥ゴボウみたいな頭して、車のカギをジャラジャラ、服にもジャラジャラみたいなのがやってくる。男で耳にピアス、指、手首にも何かつけてる。穴が開いたようなTシャツ着て、ジーンズも横糸が出てきたみたいなの穿いて『こんちはッス、やるッス』と。」
 そうかぁ。