「寒いわぁ」

 昨日の騒ぎで疲れたか、ばあちゃんは朝寝坊だ。起こして診療所に行く予定だ。寝ぼけていたが、朝ご飯がすむと、傍目には「行く気満々」に見える。私のリュックには「たたかうおばあちゃん」が5冊入っている。ついでに散髪に行くつもりなのだ。
 家を出たら、風がビューッと吹いてきた。ばあちゃんは「寒いわぁ」と言う。トンネルに入ると大丈夫だ。畑の入り口で時計を見ると、診療所に行くとバスに乗れない。散髪だけ行くことにする。バス停に着いたら、親戚の家があり、門の蔭が風があたらないので、バスを待つ。そこで気がついた。バスカードには60円しか残金がなく、小銭入れを忘れてきた。1万円札が2枚しかない。これではバスに乗れない。親戚の家に行って1000円借りてきた。あ〜あ...
 バスが来た。ばあちゃんは「あ〜あ〜」言いながら乗り込む。杖は使うが、バスのステップは軽々登る。「ここに座って」と言うと「優先座席、と書いておまっせ」と言う。漢字は読める。「ようけ、くるま、おるなぁ」とうるさいのは、いつも乗るデイやステイの送迎車や、うちや知り合いの車と同じ態度である。でも、客は少ないし、2駅だからまぁいいだろう。