「着物を着る日の制定を」元芸妓 岩崎究香(みねこ) 日刊スポーツ4月25日「男前講座・おたく、どうどすぅ?(5)」を転載

 琵琶湖に水ネズミ(クマネズミ)がいなくなって随分経ちますが、漆(うるし)を採取する人が5人になった事を知っていますか?琵琶湖の水ネズミは、漆器を制作する時に必要な面相筆(めんそうふで)になります。漆は、木片から漆を何度も塗り重ねて制作します。この日本の伝統文化のひとつでもあるものが、消えようとしています。
 「美しい日本」てか?
 私には理解できません。日本人の良さは、手の器用なところが武器だと思います。何を制作するにも世界の人から注目されるのは、創造力、器用、生真面目。私は日本人として誇りに思っています。国からの補助も無く、毎日コツコツと物造りに励んでいる人の後継者も育っていない現実をどうするのでしょうか?
 日本は、アメリカや欧州とは機構も風土も文化も違います。しかし、家を見るとアメリカか?ヨーロッパか?と見間違えそうな家の多い事。これでは、需要と供給のバランスが良くなる訳がありません。
 花柳界に関しても一般の人は、芸能人の遊ぶところと勘違いをしています。花柳界は、日本を代表するような会社の社長や役員が文化人に色々な話を聞き参考にして外国との取引をするのです。その時の必修は、日本の文化、伝統、歴史。これを認識していなくてはならないのです。そのお手伝いをする所が、花柳界お茶屋さん、芸妓、舞妓さんなのです。お座敷では、世界中の最先端の事や諸外国の文化を知り、日本の状況を把握しておかなければなりません。IT産業に力を入れるのも良いとは思いますが、生産性のある仕事の応援が先決だと思うのです。
 此の頃の日本はおかしくなっています。母国の伝統文化を説明出来ない外交官、民族衣装が着られない政治家、等等。言い出したら限はありませんが、昔から良く考えていたことがあります。国会の初めの日には、国会議員は着物を着る事、外交官も着物を着られない人は外交官にしない。(英語も話せない人が外交官になっているとも聞きました)。国に限らず、長の肩書きを持つ人は、率先して日本の民族衣装の着物を着るべきだと思いますので、一年の中で着物を着る日を作る事、国民の義務にする事...意識をすれば着物を着るべきか否かが分かるはずです。西洋かぶれも良いとは思いますが、西洋の良いとこ取りするのが、日本人の良いとこだと思います。
 私達が、舞妓さんになる前に「見習い」をさせてもらうお茶屋さんがあります。(余談、お茶屋さんは、五つのお座敷が無ければ看板をもらう事が出来ません)。そのお茶屋さんには、地下にダンスホールのようなものがあり、バーのようなカンターもピアノもありました。よくピアノをポロポロと弾いていました。でも其処は防空壕だったそうです。和洋折衷のお茶屋さん、想像できますか?