入れ歯

 手記にはないが、「ベターケア」を返しに来られたときの話。そのおばあちゃんは入れ歯を食べ物だと思い込んで、何か「かなづちのような物」で叩き割った。3つに割れた入れ歯をみつけ、ご主人は歯医者さんでなおしてもらった。次にみつけたときは、もっと細かく割られていて、修復のしようがない。しかたなく、入れ歯なしで食べさせようとしたが、みるみる食欲が落ち、食べられなくなった。そして入所になったのだが、もう回復しなかった。その後、どれぐらいを経て亡くなったのかは聞き漏らしたが、ばあちゃんもときたま、昼寝のときに入れ歯をはずし、布団の下にしいているから、気をつけねば。
 こういうとき、認知症って悲しいな、と思う。ばあちゃんも今の元気さを維持しなければ在宅は難しい。