添い寝

 今朝のこと、ばあちゃんが起きて「あ〜あ〜]言いながら廊下へ出てきた。私の目覚まし時計は、3時10分だ。困る。「寝なさい」と言って、ばあちゃんの部屋を開けると、真っ暗なのだ。天井ライトの「豆球」まで消していた。「夜は静かに寝てね」と言って、私は部屋にもどった。
 「が〜が〜」ばあちゃんが眠るわけがない。また廊下に出てきた。もうあかん。布団蒸しにすると、私が風邪をひく。しかたない。私もばあちゃんのベッドにもぐりこむ。
 鳥海さんの「添い寝」と違うのよ。あれはベッドと同じ高さのテーブルを横に置き、落ちないようにする。そこに布団をしけば「添い寝」できる、という物でしょ。
 ばあちゃんのベッドに並んで入ると、すごい。初めてなので、おもしろいから書く。ばあちゃんはふだんのパジャマを汚したので、この日は私のお古のピンクの上下だ。本人はぜんぜん気にしない、というか、色どころか「着る」ということ自体に無頓着である。その上、冬は体力の消耗が少ないのに、同じように食べるから顔が丸くなっている。つまり、私の目の前に、おそらくばあちゃんの人生で初めてであろう「丸顔のばあちゃん」がいる。む〜、不気味〜!。
 「ばあちゃん、そっち向いて寝て」と言って、窓のほうを向いてもらおうとする。窓のある壁にベッドがくっついているから落ちる心配がない。ばあちゃんは抵抗する。「なに、すんねん。ごんごん、ごんごん、押して!死ぬ!」「はあはあ、どうぞ」「なに、すんねん?」「黙って寝なはれ」「うごかれへん」「動かんでよろしぃ」「あかん、あかん」「うるさい!こんど、しゃべったら、口に紙、貼る!」てな、わけで、しゃべっていたら、きりがない。実力行使で、しゃべったら、口を押さえてみた。ばか力で抵抗する。電気毛布を敷いているので、熱い、熱い。ばあちゃんにはこれぐらいで良い温度だろう。
 あとは、もう、いつになったら...いろいろ、言うとったな。忘れてしもぅた。私がだんだん、眠くなってきた。「ばあちゃん、黙って寝る!」と言いながら、そうっとベッドからおりて自分の布団に戻った。5時だった。ばあちゃんはまだ、怒っている。戸を閉めているし、部屋が離れているのに聞こえる。15分たって、やっと寝たらしい。静かになった。
 やれやれ。こんなこと書くと、まりもちゃんに「あんたも、だいぶ、しんどぅなってきたな」と言われそうだ。こんな日ばかりではない、念のため。

家に帰ると門の石段に腰をかけたばあちゃんが手をあげて車を呼び止めようとしている 足はサンダル 手に持ったレジ袋にはあとで見ると軍手 ポシェット ハンカチもろもろ である 家に入れると猛烈に怒るのである 車を待っているらしい ようこんなに怒れるなあ 歩かないので腰を持って押してみる 力一杯後ろに体重かけてくる 夫がいう運動神経である