「悪魔のささやき」加賀乙彦著 集英社新書 2006年

はじめに 21世紀の日本を蝕む悪魔のささやき
  +人を破滅へと追いやる力・・それが悪魔のささやき 「どうしてあんなことをしたのか、自分でもわからない。なんだか自分ではない者の意志によって動かされたような気がする。本当に、悪魔にささやかれたとしか思えません」
  +悪魔は誰にでもささやきかける
1.悪魔はいかにして人を惑わすか
  +人が悪事に走るとき
  +人が自殺を思い立つとき
2.日本人はなぜ悪魔のささやきに弱いのか
  +第二次世界大戦前後の歴史から見る日本人の精神構造
  +「個」のない戦後民主主義の危険性
3.人間を嘲笑い破滅させる、ささやきの正体
  +悪魔とは何か
  +悪魔のささやきの特徴
4.豊かさをエサに太り続ける現代の悪魔
  +オウム真理教事件が私たちに問いかけるもの
  +悪魔をはびこらせる物神礼拝社会と精神の飢餓
5.いかにして悪魔のささやきを避けるか
  +悪魔につけこまれない本物の「知」の育て方
  +「個」を育てることで悪魔を退散させる 
 
 たとえば「ばあちゃんといて、一瞬でも『殺したい』と思ったことはないの?」と訊かれて「ない!」と言ったら不思議がられる。「だって、寝ないばあちゃんをベッドに入れて添い寝してるわけでしょ。『どこか開けておかんと窒息するで』なんてきわどい冗談、言うてるわけでしょ?ないの?『この人さえいなければ』と思う一瞬がないの?」「ない!年齢でみて先に死ぬべき人を殺して刑務所に行くなんてあほなことしません!」私を止めているのは「刑務所が怖い」というただ1点なわけだ。でも、それよりも大きいのは「私は一人ではない」介護しているときも今は二人、前は3人が家にいたし、周りで支える大勢の「輪」がある。
 だから「悪魔にささやかれないように」するためには、介護者を介護家族を孤立させないこと。じつに簡単なことわりだが、実際には難しいかも知れない。介護者が遠慮せずに「たすけて〜」と言える社会にしないと、な。