「はじめての在宅診療・10の素朴な疑問に在宅医がお答えします」在宅医療を考える会編集を見ながら長尾先生のお話

質問1.今、なぜこんなにも在宅医療と言われているのですか?
 9割の人が病院で亡くなるのは日本だけです。病院は「病気をなおすところ」であり、2〜3週間いてなおらなければ、それ以上いると病院の損になる。追い出される。在宅支援診療所は1万軒あると言われているが、きちんと機能しているのは300軒ぐらい。「その時まで寄り添ってくれる医者」は無い。阪神間に10〜20軒しかないのです。尼崎の人口が100万、西宮は?
 昔からの開業医は、往診し、点滴してやっています。在宅医はほんとの少数派! この本はまず、お医者さんに読んでもらいたい。
質問2.病院医療と在宅医療の二股をかけることは可能ですか?
 在宅医療の診療所と病院の二股はOK。やっとの思いで入院しても2〜3週間たてば、どこかへ出なくてはならないのが、現在の日本の医療システムです。入院したその日から、退院後の準備が始まっているのです。
質問4.病院の主治医に「状態が悪いため、家に帰せません」といわれました。
 「状態が悪いから病院」ではなく「状態が悪いからこそ自宅で」と考える。
 在宅ケアの最大の問題点は「介護力の限界」です。家族は被害者、何かを犠牲にしています。なんでもかんでも「在宅医療」と言いすぎです。独居、天涯孤独の方もあり、にんげん、さいごは一人になるのです。
質問5.在宅医療に適した病気があるのですか?
 すべての病気が対象です。大腿骨頸部骨折の手術もレントゲンもエコーも往診でできます。在宅人工呼吸もできます。輸血は手続きの問題があり、しにくいです。
 ガンとガン以外の病気の違いは在宅期間の長さです。ガンの場合は平均2ヶ月と言われます。ガン以外なら数ヶ月から年単位になります。
 人間は信頼関係を築くのに最低2ヶ月かかります。いきなり「今から救急車で返します。先生も救急車で来てください」と言われてもこまるのです。はやめにお医者さんをみつけましょう。
質問6.家でも痛みのコントロールは大丈夫ですか?
 「在宅ホスピス」と考えてください。家でもモルヒネが使えます。痛みは頓服のモルヒネで解決できます。
 日本のモルヒネの使用量は低いです。大阪・兵庫は特に低く、緩和医療の後進地帯です。
質問7.いざ臨終のときに、本当に先生は来てくれますか?在宅では家族が看取ります。主治医が臨終の場に間に合わなくても、病気の経過があり、その病気で亡くなったことが明らかであれば、死亡診断書を発行できます。呼吸が停止してから医師が到着するまで少し時間が経過しても、法律的な問題はありません。
 26ページにもあるように「24時間ルール」を誤解している医者がほとんどです。亡くなってから救急車を呼んではいけません。殺人と思われます。
質問8.看取りの実際
 家では家族が看取ります。それがこわい人は選択しなくていいのです。
質問9.在宅医療の医療費はいくらかかる?
 1ヶ月に13000円とまり。1回医者が行っても2000円程度です。
 だいたい考えてもみて。亡くなったとたん、葬儀屋さんにはバン!と払う。10万、100万単位の金が出ていく。
 「お風呂に入り」と言われ「熱あるし、弱ってるから入らん」と言っても、生きて介護保険なら1200円で入浴できます。死んで「ゆかん」してもらうと8万円。在宅医療費は何分の一から十分の一です。安い!(というても、葬儀をやらんわけにもいかんしなぁ)