質問の時間・長尾先生の講演会

1.「在宅主治医」について
 (問)どうやって探したらいいですか?(答)近所で「在宅療養支援診療所」の看板をあげている開業医から選ぶ。病院の「地域医療室」で尋ねる。インターネットで調べる。
 (問)介護・看護している家族は、手いっぱい・心いっぱいなんです。「この人なら」と思う先生にめぐり合うのが難しい。「ネットで探せ」と言われてもパソコンを開く時間もない。あっても検索してもうまく出てくるかどうか、また自分の地域の医者がのせているかどうかわからない。
 (問)在宅主治医を勝手に替えてもいいのですか?(答)いいです。外来は「フリーアクセス」です。
 (問)と言われても、実際には、次の医者に行くのは難しい。(答)「先生がきつい。もっと優しい人がいい」となど、思うだろうから、口コミで探す。「終末難民」が増えると思います。今のうちに勉強しておかねば...「在宅医療連絡会」が先月末に発足しました。

まるちゃんこと丸尾多重子さん登場:医者を育てるのが市民の力です。長尾先生は「医者らしくない」我々と同じ目線で見てくださいます。今は家族はお医者さんに、言いたいことが言えない。「人質をとられている」と思っていますから。医者を育てるのは市民、介護者の我々です。
 黒田裕子さんが会場に来ておられますので、ご紹介します。「日本のジャンヌ・ダルク」と呼ばれ「地震がおこれば黒田裕子」と言われるぐらい、すぐに現地に飛んで行かれます。テレビ画面には「被災地の心の支援!」と言う黒田さんの姿が映ります。

黒田裕子さん登場:皆さん、こんばんわ。医者・看護師を育てるのは市民です。長尾先生は珍しい方です。市民は「おまかせ」ではいかないのです。「みんなを まもるさん まんまる さくらちゃん」で勉強して、どんどん強くなってください。質問があったら、どんどん発言してください。言語化していくのが良いことなのです。
 「癌難民」については「癌対策基本法」で、再発したらみてくれない、追い出される、というものですが、兵庫県では検討委員会「県連絡協議会」を結成しました。拠点病院に入り込んで、オンブズマンとして、見て、評価表を作っていきます。

2.(質問者・すもも)(問)「たたかうおばあちゃん」は90歳で、今も畑に行って草を引きます。デイとステイを利用しています。主治医は今はその施設の診療所の先生で、往診はできません。ある朝「ばあちゃん、起きてこないな」と起こしに行って、冷たくなっていたら「ピンピンコロリ」の理想ですよね。でも、その時は救急車を呼んで「私が殺した」ということになるんでしょうか?(答)警察は死体を見て、死亡推定時刻をはかり、事件性があるかないかをみます。ですから、この場合は、もう1軒「かかりつけ医」をつけて、二股をかけておく必要があります。(問)わかりました。そうします。

3.(問)私の父は長尾先生の患者です。この冬になくなるかと思ったのですが、治って、今は長尾先生に毎週来てもらっています。自分で通院できるようになるとどうすればいいですか。(答)通院してください。「在宅」という意味は「介助なしで通院できない人」ということです。身体はピンピンしていても、どこに行くかわからん認知症の人」も対象になります。「在宅」から「外来」に替えるのも自由です。「在宅」は月単位で算定しますから「冬は在宅、暖かくなったら外来」でもいいです。往診も、月に1回とか、週に1回とかできます。

4.(問)「主治医の選び方」(ケアマネをしておられるが、お父さんが脳出血で入院された話から延命処置について、気管切開について、胃ろうについて...延々と語る)「主治医」を探すならケアマネさんに訊く。

5.(問)今日は来てよかったです。登録ヘルパーをしています。かかわってきた人が亡くなりました。3・4年前に肺癌と告知され、気合と根性で頑張りました。今日は告別式でした。おかしいと思うことは、医療とのかかわりです。医療が先行し、ヘルパーは洗濯・掃除。看護師さんやケアマネさんが本人や家族がいる前で(途中・略。個人的だし、聞いているのもつらい話で書くわけにはいかない、それを延々と話された)言われること、こんなこと言っていいのでしょうか?と思うのです。一体「在宅医療」って何ですか?そんなもんなんですか?先生!
(答)良いお話を聞かせてくださいました。(とまず、先生は受け入れる。誰のどんな話もまず受け入れる。ここが長尾先生と黒田さんのすごいところ)生活を支えることが今、日本じゅうの介護職の気持ちですね。ところが医療と連携できていない現実がある。私なら?私なら「わるい」ことは言わない。たぶん、聞いていやになる話はしない。余命?知りたくない。「はずれるでー」と言いますね。「奇跡が起こるかも知れん」あなたの気持ちがだいじ!です。
(黒田裕子さんからの答)看護師・ヘルパーの役割は(1)ケアの提供者(2)コーディネート。この2つです。あなたは患者さん・家族の代弁者として、発言したその人に言ってあげてください。「死の宣告をされても、その人にしかわからない寿命というものがあるのです。余命3ヶ月と言われても半年生きた人もいます。(いる、いる、そんなのあたりまえ)あなたの発言は我々の課題です。感謝します。

6.(質問者・まりも)父は91歳で、心臓が悪く、病院は二股かけています。大病院で薬を処方してもらい、往診は週に1回、看護師さんが週に1回です。長年のつきあいのお医者さんが高齢で引退され、引継ぎは看護師さんの紹介で、今の「訪問医」になりました。父の診察だけでなく、母と私の不安も聞いてくださり、家族として、医者・看護師・ヘルパーさんにめぐり合えてよかったと思います。家族がコーディネートできればよいが、本音は自分で探すゆとりが無いのです。(答)そういう時の相談窓口が「つどい場さくらちゃん」ですよ。知事も応援しています。(は?何、それ?)

7.(問)父が脳出血で入院しました。次にどこに行くか、探している間、おいてくれますか?(答)点滴をしているのでおいてくれます。点滴だけで、1ヶ月なんぞ死にません。皮下輸液というのが大昔ありましたが、今またこれがいいのです。(問)救急車で運ばれ、選択するまで2週間、と言われました。(答)病院で受け入れてもらって、蘇生術をするか?人口呼吸器をつけるか?普段から考えておく必要があります。人間はいつか食べられなくなるときがきます。その時にどうするか?胃ろうにするか?考えておくことです。

8.(質問者・枚方のお姉さん)先生の前回の講演を聞きました。「はじめての在宅診療」の本を50冊、手に入れて「枚方の共通認識よ」と言って配りました。亡くなって先生が「警察を呼びましょう」と言われたときに、私たちが無知であってはいけない。聞いて勉強して皆に伝えていく。昇(のぼり)先生が「元気で長生き研究所」をしておられます。癌であっても笑うと癌細胞が死んでいくそうです。べつに癌でなくてもいけますからどうぞ。(答)それはいい。「笑い学会」というのがあって、おもしろくなくても笑うトレーニングをします。「笑いヨガ」「生きがい療法」というのもあります。私のクリニックでも「花見」をします。その後、亡くなった人もいますが、歌ったり楽しく過ごすことが大切です。

まるちゃんのまとめ:これは...つづく。9月23日の「かいご学会 in 西宮 2008」実行委員会に長尾先生も来てくださっています。長尾先生を「日本の宝」としてお守りしたい。(とまあ、今日は「質問」というより「語りたい」人だらけであった。聞いてほしかったのだ)