通院

 頭の傷の抜糸と定期診察に行った。9時に家を出るときは小雨が降り始め、右腕をばあちゃんに握らせて、左手はかばんを腕に通し、傘をさして行った。ばあちゃんは腰が曲がっているので、傘からはみ出たお尻がぬれそうだ。私の腕を、むんずとつかんでいるので、ぐんぐん歩く。はやいで〜。
 畑を通らず、大通りを行く。途中で喫茶店を見ると、入りたそうに見ているし、足が止まりそうになる。そんなのは覚えているんかい?
 なんとか診療所に着いた。杖と傘は玄関に置く。受けつけに行き、ばあちゃんはソファに座る。おとなしくなって助かる。処置室に呼ばれ、ベッドに行く。「ここに乗って」「横、向いて」の指示が通じない。日本語がわからないんだよ。動くと抜糸できないので、しかたなく「ぐるぐる巻き」にする。拘束帯というのだ。「ごめんね、動かないでね」と言いながら看護師さんが巻いていく。もちろん怒るとも。
 抜糸?痛いはず。糸をピンセットで引くし、瞬間はチクッと痛い。「痛い!死ぬ!」と怒る。でもすぐに終わった。
 診察室に移動して血圧を測ったら、130だ。正常範囲。きわめて健康。あはは。聴診器を当てても無事終了。
 廊下に出てまたソファに座る。ひとが通るたびに「お兄ちゃん」とでも呼びたいが、無視されている。なんか、今日は忙しい人が多いようだ。
 ケアマネちゃんに電話をかけると迎えに来てくれた。雨なので外には出ずに廊下伝いにデイに行く。ばあちゃんは私の右手を握っているので「どう?独立独歩型ばあちゃん!」でしょ?迎えに来てくれたスタッフが「行きましょ〜」と両手を出すと甘えた声で「はぁ〜」と言いながら、お手手つないでになるが、私が腕を出すとこれは「杖」なんだ。しっかり自立して歩く。
 デイにはもうメンバーが揃っていたが、皆、しずか〜である。知ってるばあちゃんがいて「年とったなぁ〜」と思う。自分の親や自身のことは棚にあげて...あげる棚があってよかったなぁ...