「閉鎖病棟」帚木蓬生著 新潮文庫 1997年

 これも北海道に行く前に関空の書店で買った。
 閉鎖病棟は「精神病院」の中にある。開放病棟も準開放病棟もある。
 小説の力はすごい。これは平成6年(1994年)に刊行されたとあるから、「精神分裂病」といういいかたである。今は「統合失調症」というの?「精神鑑定書」を読んでも「裁判記録」を読んでもルポを読んでもわからないのが、この小説で「どんな状態になって親を殺したのか?」がわかる!そして「これは病気なのだ。やはり刑法で罰してはいけない」とも「飲めばなおる薬がある」こともわかり「脳の病気なのだ」とわかる。
 我が家の近くに「精神病院」があり、入院患者のうち症状の軽い人やなおって社会復帰を待っている人が隣の田んぼに仕事に来たり、うちの畑の隣が施設だったり、私は小さい頃から「心の病気」の人のわりあい近くにいた。それでもわからない。小説ならこんなにわかる。この作者は1947年生まれ、精神科のお医者さんだ。
 私の知人が「ひきこもりになって自分から精神科を受診した」と言ったが、彼のSOSだったのだ。あとから「わかってやれなかった」というが、わかってやるなんてできっこない。「こころ」は自分でも他人でもつかみどころがない。