帰るなりトイレに

 ばあちゃんはデイに行くとき「最終排便」のらんに「確認できたのは、ショートステイ期間中の20日(土)で、その後、家では出ていません」と書いた。
 帰ってきたとき、スタッフさんが「おやつのあとで、トイレに座っていただきましたが、出ませんでした」と言われた。
 ばあちゃんは必死の形相で「べんじょ、行く」と言う。ついて入ったが、一生懸命頑張るが出ない。固くなっているのだ。「こらえておくなはれ」と言う。言葉の使い方が間違っている。両手で「ぎゅっとぎゅうとなっとる」と出口で止まっている様子を表現してくれる。「頑張って出すよりないやんか」と言ってみるが、だめらしい。ウォシュレットなので、何度か温水を出してみた。柔らかくなるかも知れない。
 そのうち「しぼりましょか?」と言う。手つきは自分で書き出す格好だ。やめてくれ。それをやると、手に臭いがついて消えない。もっと前は自分で出していたから、臭いでよくわかった。
 ちょっと、横道。何でもそうだが「やらなくなったのは何時?」と訊かれても記録していない。記憶もない。例えば「何時からお経をあげていない?」「かたかなのルビが読めなくなってから。何時かは記録がない」「何時から下の神さんを拝んでいない?」「わからん」この日記の一番の不備。しかたがない。
 戻る。「しぼりましょか?」と言いながら、私の方へ手を伸ばして動作をするので、ぞっとする。それなら私がやったほうがましだ。その後の手洗いを考えると、ばあちゃんよりも私の方が上手だもの。それで、ばあちゃんのお尻を持ち上げ決行した。固くなっている。丸くなくて平べったい固まりだ。もちろんばあちゃんはわめき、抵抗したがさっさとやった。でも、ばあちゃんが手を伸ばすのでばあちゃんの手にも、少しは便がついた。半分も出せなかったが、パンツをあげて手を洗わせているとき、気がついた。残りは紙パンツの中に出ている。そこで、着ている物を上から下まですっぽり着替えて布団に入れたら、ばあちゃんは疲れて寝てしまったのだ。あ〜、奮闘、糞とう。あはは〜。
 これを書くから「嫁なら書けん」とか「実の娘なら書かない」と嫌われるもと。わかっているけど、これは便秘対策のできていない私の失敗。排泄介助のできない私の失敗。三好さんの本にも安永さんの講演にも「認知症でも尿意と便意はある」と書いてあるが、ばあちゃんには失敗の連続。おしっこは、いつのまにか、紙パンツでしている。畑で草を引くのが和式トイレスタイルなので、パンツに便が出ていて、大成功!と私は思うが、ばあちゃんは気持ちが悪いのか、感じないのか、平気でそのまま草引きをしている。ちょっと情けないが、出るのだからいいか、と思う。