「家をたたむ」

 俳句の本を出版された方とずっと前に知り合って、ときたま、お会いしたり、電話でお話をする。その方は長年住んでいたお屋敷を引き払い、マンションに引っ越しされた。
 「家をたたむって、大変よ」とおっしゃる。
 ばあちゃんの法要をするためと「芋煮会」でお客さんが来るので、家を片付けている。ばあちゃんが「また使える」と言って溜め込んでいる。
 畑の小屋に入ると、それこそ、雑多な道具が置いてある。じいちゃん・ばあちゃんの時代は「若い者が継ぐのが当たり前」の時代だった。「若い者が年寄りの世話をするのが当たり前」であった。
 今はそうではない。幸い、私たちは親の世話をできてよかったな、という時代だ。この雑多な物を処分しなくては、あとに続く者が困るだろう。「家をたたむ」まではいかないが、物を処分...考えただけで、ぞっとする気分。