「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史・上下」ハワード・ジン著 R.ステフォフ編著 あすなろ書房 2009年

上巻1. コロンブスがはじめた征服の歴史
2.アメリカの大問題、人種差別と奴隷制のはじまり
3.ひと握りの金持ちのための社会
4.「建国の父」たちの素顔
5.合衆国憲法は本当に画期的だったのか?
6.初期アメリカの女性たち
7.欲深き指導者たち
8.メキシコ戦争
9.アメリカ政府が黒人奴隷にしたこと
10.政府はだれのもの?
11.格差のピラミッド
12.軍事介入好きな国、アメリカ誕生

下巻1.階級なき社会であるはずのアメリカで
2.第一次世界大戦
3.狂乱の1920年代、そして大恐慌
4.第二次世界大戦と冷戦
5.立ちあがる黒人と公民権運動
6.アメリカにとって最初の敗北となったベトナム戦争
7.反戦から女性解放運動、そして1960年代のインディアンたち
8.激動の1970年代
9.1970年代後半から80年代、政府は国民の不信感を払拭できたのか?
10.1970年代後半からの反戦運動と労働運動
11.世界最大の武器輸出国アメリ
12.超大国アメリカとテロ
13.素顔のアメリ
14.人々が選ぶアメリカの未来

 大学のときに先輩たちから「これが入門書」と渡されたのは「アメリカ人民の歴史」岩波新書であった。原書は 「We the poeple 我々こそ人民」であった。コロンブスが来るや、だまされ、土地を奪われ、追い払われたインディアンたち。奴隷船に押し込まれ、連れてこられ、せりにかけられる黒人たち。ほろ馬車で西部を目指す人々。プアホワイトと呼ばれる貧しい労働者。「自由も権利も与えられるものではない。勝ち取るものだ」という事実。
 それが当たり前として、学校で教えられているのではないらしい。
「14.人々が選ぶアメリカの未来」に著者は「なぜこうした本を書こうと思ったのか、とよく質問される。理由の一つとして、20年間、歴史学政治学を教えてきたが、従来のものとはちがうタイプの歴史書を書きたい、と思ったことがあげられるだろう。わたしが大学で学んだ歴史書とも、全国の生徒や学生に与えられている歴史の教科書とも異なるものを書きたいと思ったのだ」とある。
 それは誰の立場から書かれているか?支配している者からだ。「アメリカ合衆国憲法を起草したのは、特権階級に属する55人の白人男性だった。貧しい者、黒人、インディアン、女性たちには権利がなかったのだ。
 この本の帯にあるように「アメリカは差別と貧困と戦争好きの国」なのだ。下巻の9章に理由が書いてある。
アメリカの政治的伝統の大きな部分を占めているのが、資本主義と国家主義だ。資本主義という経済構造は、深刻な貧困層をふやす一方で、大富豪をますます潤わせていく。またアメリカ合衆国の利益がつねに世界じゅうでもっとも優先される、とする国家主義は、戦争と、戦争準備をうながす。20世紀も終わりにさしかかって、政権は民主党共和党のあいだを行ったりきたりしていたが、どちらの政党も、あるべき新しい社会像を示すことはなかった」
 これを読めば今の日本がどうなっているかがわかる。
 テレビは「若い女性の間では、歴史ブームであり、戦国時代の武将に人気が集まっている」と言われているが、武士と言うのは支配する立場にいたし、食べ物を作っていた百姓はどうだったのか?が抜け落ちているのだよ。