「Dr.和の町医者日記・認知症シリーズ」産経新聞 土曜日(Dr.和 は長尾和宏医師)

 近所の「紫陽花の会」メンバーが切り抜いて、持って来てうちの郵便受けに入れてくれていた。「認知症の知識が乏しい私にとっては、とてもわかりやすい説明です」というメモが入っていた。

(1)認知症はありふれた病気・・・「物忘れ」との違いは   5月15日付け
 町医者になって15年。日々、認知症の急増を肌で感じます。2週間ごとに通院していた患者さんが、2ケ月後にひょっこり現れて「まだ2週間しかたってないじゃないか!」と怒りだす。昨日、薬を渡したばかりなのに、今日またもらいに来られる。これらは」すぐに認知症だと診断がつきます。診察後、何度も診察室に入ってくるのも特徴です。
 認知症は年齢とともに増加し、85歳以上の高齢者の27%に発症します。現在65歳以上の方のうち認知症患者は約200万人、8%です。これが2026年(平成38年には約330万人、10%に増加すると予想されます。まさに65歳以上の10人に1人が認知症という時代がやってきます。
 
 (以下、「物忘れと認知症の違い」「認知症についてどこに相談するか?・・・まず、かかりつけ医に」「認知症とは介護の病気であり、うまくつきあっていく病気であり、医者選びだけでなく、ケアマネ選びが重要」と続く)  
 (さて、私が8日の「認知症フォーラム」の長尾和宏さんの講演を「明るい」と表現したのは、ここにある。「町医者として診察室にいたら、認知症の人って、いっぱいいるよ」という感じで、聞いていると「なぁ〜んだ」という気持ちになる。
 「認知症サポーター養成講座で『15年後には・・・』と脅されなくったって、我々団塊世代が15年たてば、75歳になるんだもの、認知症が増えたって当たり前だ。当たり前だけど、実は「それはとても恐ろしい」と私は思うのだが、それを少し上の年代から言われたり、下の年代から言われると、なんだかいい気持ちがしないのだ。好きで「団塊世代」に生まれたのではないよって言いたい?生まれたときから「同年代がうようよいて、競争がくせになっている」ので、ねぇ。どうしろと言うの?わからん、明るい未来なんて描けない。
 だから、長尾君がさらっと言ってのけると、ほっとする。だから「明るい」と思っただけ。

(2)認知症の種類と原因・・・生活習慣病と深い関係
 驚くほど多くの認知症の方と接する毎日です。薬の管理ができない、迷子になる、すぐに怒る、着衣ができない・・・など介護者も困り果てて相談に来られます。ひとくちに認知症といっても、かなり個性豊かです。陽気な認知症、陰気な認知症、静かな認知症、にぎやかな認知症・・・。
 
 (以下、アルツハイマー病、脳血管性認知症レビー小体型認知症。その比率は、6対3対1。
 アルツハイマー病は生活習慣病と深く関係している。糖尿病やメタボリック症候群と密接な関係にある。町医者の仕事は生活習慣病の予防と治療である。管理栄養士と共に食事指導をする。これが認知症の予防につながれば嬉しい限りだ。
 認知症の診断は「長谷川式テスト」。
 また「頭のCT」「血液検査」をして「治る認知症」を見つけ出す。CTをとって「慢性硬膜下血腫」をみつける。血液検査では、甲状腺ホルモン欠乏症、葉酸欠乏症、ビタミンB12欠乏症をみつける。)