介護保険10年、家族の3人に1人「良くない」「あまり良くない」 6月10日(木)
信濃毎日新聞社は、導入から10年を迎えた介護保険制度の課題を探るため、全国の認知症介護家族、県内の介護施設とケアマネジャーにアンケートを行い、9日、結果をまとめた。現行制度について「良くない」「あまり良くない」との回答が、ケアマネジャー、施設で40%、介護家族も30%をそれぞれ超えた。「認知症はすべて要介護と認定すべきだ」との声は強く、認知症急増の超高齢化社会を見据えた制度改正が迫られる。
2000年4月に始まった介護保険制度は、12年度に改正を予定。厚労相の諮問機関・社会保障審議会介護保険部会は5月末に見直しに向けた議論を始めている。
調査は、4〜5月にかけて実施。現行制度について、認知症介護家族では「良い」(「まあ良い」含む)が59・5%で半数を超えた。「良くない」(「あまり良くない」含む)も33・8%ある。
「サービスの利用で負担が軽くなった」との声が多いものの、「施設が満杯で思うように利用できない」「地域によって保険料やサービス内容に差がある」といった不満も寄せられている。
介護施設の回答は「良い」49・3%、「良くない」44・6%でほぼ二分。「要介護者がサービスを受けるため自宅の外に出るようになった」との評価の半面、「介護報酬が少なく、十分な職員配置ができない」との指摘があった。
ケアマネジャーは「良くない」が49・9%で、「良い」の44・0%を上回った。「経済的に許される範囲でしかサービスを提供できず、必要な支援ができない」と、経済的に困っている世帯への支援の薄さを問題にする声が目立つ。
介護の必要度を7段階に分けている要介護認定は、「現行のままでよい」が40%前後でいずれも最多。ただ、「段階数を減らす」「認定をなくす」といった回答も、家族37・4%、ケアマネジャー35・3%、施設で26・5%あり、見直しを求める声は少なくない。
認知症の人の認定をめぐっては「要介護度が低く出る傾向がある」との指摘がある。「認知症はすべて要介護と認定すべきだ」とした家族は64・4%に上り、そうした不満の多さを裏付けた。利用額の上限は「なくすべきだ」「引き上げるべきだ」も、家族で50・8%と半数を超える。
サービス拡充のために国民負担を増やすことには、そろって「賛成」が「反対」を上回ったが、いずれも「どちらともいえない」が40%前後で最多だった。
国民負担増に「賛成」とした人に「どこで負担を増やすべきか」を聞いたところ(複数回答)、家族と施設で80%以上、ケアマネも80%近くが「国や自治体(税金)」と回答した。その70%以上は、財源確保のための消費税引き上げに「賛成」としている。
制度改正で検討してほしいテーマ(二つまで)では、いずれも「介護職員の待遇改善」が最も多かった。