しきみ

 山に行く。静か過ぎて怖い。蜂はいなかった。猪の堀りあとと蜘蛛の巣だけだ。
 ばあちゃんもお彼岸の前にはしきみをとりに山に行っていた。束にして背負って帰ってきた。ある時は「束にして置いといて、次に行っているうちに、どこに置いたか、わからんようになってしもうた」と言って帰ってきた。
 またある時は「一緒に行こうと誘われたけど、一緒に行ったら取られるから、先に行って取ってきた」と帰ってくることもあった。欲張ってもしかたないのにね。