「平城京せんと祭」

 まだ見に行っていなかったので、一人ででかけた。寒いぐらいだった。
 JR大阪駅で「大和路快速・奈良方面加茂・奈良行き、大阪10時3分発」に乗る。すいている。
 JR奈良駅からシャトルバスに乗るのだが、遠い。道も混んでいるし、時間がかかった。
 大和路は平らで米どころのはずだ。車窓から見ると、刈り取りのすんだ田んぼ、まだ残っている田んぼ、稲わらをつとにして立ててある田んぼ、いろいろだ。
 平城京はとても広い。朱雀門が馬鹿でかい。中庭に田んぼを作れば、どれほどたくさんの米が取れるだろう?今は草原となっている。
 大極殿は馬鹿でかい。復元するだけで何年もの歳月を費やしている。天皇玉座も素晴らしく大きい。国家権力の大きさを思い知らせるため?
 莫大な費用と莫大な労働力だ。
 資料館で遣唐使船に乗り、平城京の映像を見た。空から見たような俯瞰図だ。始まるなり歓声が上がった。「これは見る値打ちがあるなあ〜」と言う声しきり。
 大きい大極殿の前の広い広場に、人がぎっしりいるでもない。正月の祝賀行事に連なる官吏たちだ。国威発揚なのかなあ。
 でもね、奈良の都を知るなら「橋のない川」も同時に読まなくてはね。あの百姓の苦労話はなかなか、農業をやらない人にはわからないとは思うけれど。暑いさなかに田んぼで、はいつくばって草取りをする、なんぞ、どれだけのエネルギーがいって、それに使うための自分達の食べ物の貧しさ。そういうこと。
 会場は団体客でいっぱいだった。学生の団体もあちこちにいた。行儀良く引率されていて、昔も今も変わらないなあ。
 あとはバスに乗って、美術館に行った。東のほうの山すそにあり、のんびりしていて、家々も歴史を感じさせる造りが残されており、奈良の秋はよいものだと思った。
 入江泰吉さんの写真集を買った。高校生のときに現代国語の先生の推薦図書で、亀井勝一郎さんの「大和古寺風物誌」に出会ってから、大和は心の中にあって、実際に来て見ると、例えば新薬師寺の小ささに驚いたりする。
 窓から見ると、鹿はのんびりといて、次に来るときはもっとのんびりしたいと思った。