「震災の悲しみと光を詠む」朝日新聞2011年4月18日(月)

 先ごろ緊急募集した「東日本大震災を詠む」に寄せられた短歌、1700余首から選ばれた「3・11」
馬場あき子選
 原発に近き牛飼い涙ため子牛助産す離農決めし夜   田川清(熊本市
 袋縫う仕事もありてボランティア骨入れるためと聞けばたじろぐ  奥原百合子(茅ヶ崎市
 今夜また来るかも知れぬ大地震リュック背負ひて花の種蒔く 加藤宙(日立市

佐々木幸綱選
 津波後の瓦礫に佇む老一人息子がいない息子がいない   石島佳子(栃木県鹿沼市
 失くしても亡くしても今生きているあなたがどうか強くと祈る  高倉曜子(日田市)
 袋縫う仕事もありてボランティア骨入れるためと聞けばたじろぐ  奥原百合子(茅ヶ崎市

高野公彦選
 教室の机が引き橋となり少女が渡る津波の上を   林田幸子(神戸市)
 かなしきはこわれたものの写真より震災前のきれいな町なみ  有田裕子(福岡市)
 「こんな時笑ってもいいの」と生き残る老いが足湯を受けつつ笑まふ  西村由紀子(岡山市

永田和宏
 黙黙と環七歩く群れにいて家路辿れる事の幸福   森永恒宏(東京都中野区)
 飛び出して柿の幹抱き凄まじき大地の揺れに五感を晒す   伊藤夏江(茨城県牛久市
 傷深き東の国へ祈りおり「神戸はいつも傍にいます」と   沙羅みなみ(宝塚市