ひらたねなし柿

 少し前に柿を取っているおじさんが散歩から帰ってきたので「どうするの?」と聞いたら「干した」と言う。「これはひらたねなし柿で、焼酎で渋をぬくのよ。お店で売っているのはアルコールでぬいてある。焼酎の方が風味が良いのよ。この時期に干してもだめ。気温が高いので、雨にあたったらカビが生えるよ」と言うと「生えます」と言う。「干し柿にするのは、あの、とがった、みの柿で、もっと、キーン!と寒くなってから干すのよ。雨にあたらないように、雨が降り出す前に家に入れるか、ビニールで被って、雨がやんだらはずす」と言うと、目をパチクリしている。「何でもやり方があるので、持ち主に聞いてからやってね」ということだ。
 百姓に必要なのは、想像力と創造力。「かわいそう」という感性。
 そうだ。いつもは大阪でくらしている人が休みで帰ってきて「栗を拾いに来た」と言う。「もう終わりだよ。それより、ひらたねなし柿の渋抜きでも作りよ」と言って、持ってきてあげた。「どうやるの?焼酎って35度?」「梅酒用のホワイトリカーよ」「どれぐらい入れるの?どんぶり一杯?」と聞く。「そんなに要らない。どんぶりに少し入れて、柿をころころ転がして、焼酎をまぶすだけ!」「そうか!やってみよう!」と言う。いささかマイペースすぎるこの人、大丈夫かな?先輩の言うことをまず聞く、という姿勢も必要なんだよ。