とんど

 うちの村の氏神さんだ。
 こんな山の中の古ぼけた神社の、下側の山の中の広場でやるくせに、大きい。中心に高い竿を立て、針金を張って「恵方」に倒れるように仕掛ける。木やら竹やら巻いて、外側に「しのべ竹」を巻いて縄でグルグル巻く。危ないので、消防団が周りの木々に放水する。宮守が火をつけたら、よく燃えて歓声が上る。
 お客様も多くて、今年はたまたま通りがかったマウンテンバイクの団体に「どこから来たの?見て行って、もうすぐ火がつくから」と呼び止めた。珍しいでしょ?
「昔はこの火に書初めを投げ込んで、舞い上がったら、字の上達をお願いしたのになぁ〜」なんて言っている人がいる。村も少子化なのだ。
 だいたい燃えおちたら、大きな網を持ち出し、残り火で餅を焼き、婦人会がおぜんざいをもてなす。私は焼く係りで「手伝って」と言うと、ご夫婦やら、若者やら、かけつけて、焼いたり、運んだりしてくれる。何かに参加した方が思い出が残るでしょう?
 村の人たちは、昔からのやり方で、竹を切ってきて、縦に穴を開け、餅をはさんで焼いている。大きな鏡餅も焼くので、見物の価値はある。海老餅やら柚子餅をついてきて、ふるまう人もいる。