「ボケからのカムバック」増田末知子著 静岡新聞社 1994年

1.ボケは寂しい・ボケは苦しい
2.痴呆とはなんでしょう 
 1 痴呆の定義について
 2 ボケと痴呆の区別
 3 痴呆の型
 4 「うつ」と「痴呆」の鑑別について
 5 痴呆の進行について
 6 痴呆の判定
 7 痴呆の症状
3.スリーAの活動について
 1 スリーAとは
 2 脳活性化訓練の論理的根拠について
 3 脳活性化訓練の目的
 4 スリーAの方針
 5 スリーAの対応
 6 期間内スケジュール
4.痴呆からのカムバック
5.「ボケは寂しさから」について
 1 解決できないことと、理解できないこと
 2 「寂しさ」が、ボケにつながる
 3 家族のかかわり方
6.スリーAを卒業して1年後
 1 退所後の経過パターン
 2 退所して1年後の状態
 3 良くなる方の要因について
 4 たとえ悪化しても
7.頭の機能が良くなった時の表現
 1 言葉で表現してみると
 2 文章で表現してみると
8.家族のかかわり方
 1 変化を早期に発見することの重要性
 2 良い状態を持続するために
9.本人と家族へのお願い

 増田さんの講演会の会場で求めた。
 「はじめに」で増田さんはこの本を書いた目的を
(1)スリーAの実践を記録保存すること
(2)痴呆の知識と痴呆へのかかわり方を理解していただくこと
(3)痴呆は早期であればカムバックできると訴えたかったこと

 「認知症」という言葉のない時代だったので、今なら「ボケ」を「単なる物忘れ」、「痴呆」を「認知症」と呼びかえればいいだろうか? ただし「認知症」という呼び方自体が不完全で「認知障害症候群」だよね?「ここにBという物があるとき、それをBであると認識する」ことが「認知」、それをできなくなっているので「認知障害」でしょう?
 第1章の扉に「訓練施設」の写真がある。本書の最後のページに「スリーA」の事業内容がまとめられている。
 民宿に長期滞在の形式で宿泊訓練を行う。静岡市から20km、玉露の里に近く、部屋から窓いっぱいに山の緑と川を望むことができる。職員は所長の増田さんと非常勤の型が3名。外部講師は3名、書道とレクリエーションと大正琴の先生である。
 病院で「かなひろいテスト」と「MMSテスト」を受け、「前痴呆」「軽症痴呆」と診断された人を受け入れる。「この脳トレーニング研修に参加することで、50%から80%の方によい変化が望める予測です」
 期間は3ケ月間(11週間)。月曜日から金曜日までを施設で過ごし、土・日は家に戻って家族と過ごす。
 家族の協力が欠かせない。
 この本には、豊富な事例が書かれている。訓練を受ける人を「お仲間さん」と呼ぶ。訓練最初に書いた文章と、途中や終わりごろに書いた文章、絵、などを載せて、なるほど、良くなってきたことがわかる。
 増田さんが言われるように「寂しさから痴呆になる」「本人が寂しい」というのは私も「たたかうおばあちゃん」の経験からわかる。
 「呆けた本人は何もわからないから幸せ」は大嘘で、本人が一番初めに「自分はなにかおかしい」と気づき「どうなってしまったのだろう?」と不安になる。ばあちゃんは「頭がいんでしもぅた」と言っていた。体はここにあるのに、頭だけが「西方浄土に往んでしまう」気がするらしい。他人から「ばあさんは、頭がいんでしもぅてる」と言われると、たまらなく悔しい。好きでなったのではないのだ。しかし「家族の責任だ」と言われるとつらい。本人の責任だと言われると、それも困る。早期に発見して、このような訓練を受けて、現実世界にカムバックし、穏やかに暮らしてくれたらこんなにありがたいことはない。増田先生に巡り合えた方は幸せだ。
 私などが真似をして「スリーA」をやってみても、できるものではない。向いていない者はしかたがない。
 せめて、このブログで紹介して興味を持たれたかたは、是非、調べてみてください。「スリーA」「認知症予防」などで検索できます。「増田末知子」さんまたは「高林実結樹」さんを入れても出ます。