「えぇトコ有馬温泉たび・心温める名湯と職人魂」

 あったか探し、次は「親子三代、まごころを編む」
 大正時代に創業の竹細工くつわさん。奥さんの秀子さんが迎える。ペットボトルケース。箸。奥さん「外国からのお客さんは箸置きを買います」
 苅谷さんがかごを見つけた。「一本一本、手で編んだ?」秀子さん「機械でできないねん」
 これが、秀吉や利休の愛した竹細工。
 工房を訪ねる。
 松本さん「三代揃って編んでいる」
 真ん中が昭竹斎さん、この道47年、向かって右が息子の豊さん、この道27年、左は孫の克憲さん、23歳、去年始めた。昭竹斎さんが竹を割る。上にくる方を口にくわえて、もう一方を下へスーッと引く。機械だと竹が割れる。これが猪名野笹竹。均一に剥ぐ。折れる確率が80%。熟練の技だ。スピードと力。この細く剥いだ竹を丸めてみる。経験が浅い人が剥ぐと丸くならない。昭竹斎さんが剥ぐと丸くなる。
 竹選びも重要だ。昭竹斎さんが山奥へ取りに入る。夏かな?場所は秘密だ。希少価値だから。
 工房に戻る。豊さんが言う。「出来上がりに心がこもっていないと、たちどころにわかる。朝、置いておくと、ようできとる、言うてくれる。あかん時は、ポンと置いてある」
手と心の温かさなんですね。幼い時から祖父と父の仕事を見てきた孫の克憲さんが言う。「自分がしなかったら、伝統が終わる。それはいやだなと思った。見ていて大変だと思った。やってみて大変です」
「父としてはどうですか?」と問われ、豊さんが「父としては甘い。孫には特に甘い。僕にも欲しかったな」


さて、次は「子宝を授かる文具」
 招き猫の「まねきや」できいてみる。
「文具ですか?人形の出てくる筆がありますよ」
向かいの西田筆店。「謹賀新年」の大きな貼り紙。取材はお正月からこっちだったんだ。
色とりどりの筆が写る。西田明子さんがからくりを見せてくれる。
「字を書くように持って下さい」まっすぐ持つと筆の頭から人形が飛び出す。下向けると入る。明子さん「これが子宝です。温泉に入ったり出たり、温まって」このいわれ。1400年の昔、日本書紀によると、孝徳天皇の后に子供がなく、有馬温泉に浸かったところ、皇子を授かった。
450年前から作られている。今も子供の欲しい人が訪れる。
仕掛けを見せてもらう。人形に重りがついていて、筆を立てると出たり入ったりする。
「この模様は?」「糸を巻いている。こうやって筆の軸の竹が見えなくなるまで」
松本さん「おばあちゃん、おいくつ?」光子さん「93、大正11年生まれ」
今も現役、6代目、22歳で嫁ぎ、70年近く作ってきた。松本さん「何本作った?」光子さん「何万本、指が歪んだ」竹を挟むので、中指と薬指が外向きにそっている。「糸を引くから跡がつく」と見せてくれた。親指には糸の跡がへこんでいる。「職人の指だ」
「この柄は教えてもらった?」「見て覚えた。昔の人はそんなんよ」昔は、矢絣、ウロコ、青海波、市松の4つ。今は100以上。お気に入りは陽明門。おじいさん、つまり先代徳治さんがほめてくれた。32年前になる。
 松本さん「正確に目印つけてる」光子さん「一本順番間違ってもきちんと柄になりませんわ?」
 松本さん「けっこう、しっかり引っ張ってないとできません。目も疲れます」
 全国から夫婦、カップルが訪れる。「これ、買って帰って、子供ができた!と報告に来るよ」明子さん「一昨日、来られました。不妊治療中のお友達にあげたら、赤ちゃんができた、と」
 松本さん「優しい筆ですね。人形筆であったまりました」
 苅谷さん「温泉だけじゃない。伝統を発展的に継承する」

 松本さん「もう、ひとっ風呂、行きませんか?」苅谷さん「あたぼうよ」


というわけで、普段はひらがなで筆記するのに、今日は漢字で書けた。しゃべり方がゆっくりだったのだろう。
「なんで、書いているの?」「講演会で筆記する練習よ。たまにはしていないと、筆記能力が落ちる」「ICレコーダーがあるでしょう?」「あ、持ってたね。ばあちゃんが夜中に騒いで、一人カラオケしているのを録音してたなあ。使わなくなると、使い物にならない。」
なんでも同じ。あれは使いにくい。ではまた