「電気、消して」

 ばあちゃんは4泊5日のステイから帰ってきた。
 夜、眠れないばあちゃんは、テレビのリモコンスィッチを持ってやってきた。
 「電気、どないして消すのんや?」と言う。「どれどれ?」と言って、部屋について行き、「ここ、引っ張って」と言いながら、蛍光灯のひもをさした。消えたが...まだまだ明るい。
 ばあちゃんは、障子を開けた窓の外を指さす。「あの電気、消えへんのんか?」と言う。私が「あれは消えへん」と言うと「テレビやろ?」と訊く。「あれはテレビとは違う」と言うと「そうかぁ」と...わかってるんかな?
 あれは、中国縦貫道だ。ベッドに入っても眠れないばあちゃんが、手を伸ばして障子を開けると、高速道路を通る車が見える。以前は「どんどん車が来るで。どこ、行くねん?」と訊いたものだった。「皆、行きよってやで。起きようか?」と言うこともあった。夜でも車が通るのは、あたりまえ。「皆が行っても、ばあちゃんは寝るの!」と言って寝かせた。なのに「テレビ」と言うか? 本物のテレビを見ても、内容がわからないもんなぁ。相撲をつけてやっても、2〜3分で消して席を立ってしまう。