朝から待望の雨だった。ばあちゃんは「何、しますのん?」と言う。雨を知ってか、知らずか?
 先手を打って「雨はありがたい。みな、田んぼができる」とメモを見せる。
 雨に気づいたらしい。玄関に出て「雨、降っとる」と言う。「どないしますのん?」と訊く。「家におって」と言うと部屋に戻る。また出てきて、同じことを訊く。何度も、何度も...これを、ステイに行って、廊下やホールで出会う人、出会う人ごとに訊けば、誰だってイライラするわねぇ。よ〜ぅ、わかった。気難しい人に、パンチをくらったとしても、私は訴えたりはしない。
 「何するの?」と尋ねるから、ステイでは「仕事よ」と言って、洗濯物をたたんだりさせてくれるのだろう。でもそういう仕事は嫌いだから、じっと側についていて、ばあちゃんの言う事にいちいち返事をしながらやるわけだから、それはしんどいこと。
 家だと私は「何も仕事はないよ」と言う。家事は嫌いだもの、掃除でもいいつけると、抵抗する。それなら、訊くな!「じっとしとって」と言うと「じっとしとったら怒られる」と言う。「仕事しとっても怒られるのに、じっとしとったら、何、言われるかわからへん」と言う。よっぽど、姑にいじめられたのが、あるんだなぁ。姑が死んだとき、ばあちゃんは38歳。それからは自分の好きなようにしてきたでしょうに。