職場訪問

 畑にいたら、何やら声がする。ケアマネさんが来てくれて、ばあちゃんに声をかけていたのだ。私がケアマネさんに近づいて、ばあちゃんを呼ぶと、やってきた。
 なにやら、ポケットに入れている。「出して」と言うと、きゅうりだった。「これは、うちのきゅうりじゃないでしょ。よその人のを取ったんでしょ」と言うと、ばあちゃんは「うちのんや。あっちや」と指をさす。けれど、やっぱり、変だ。「ばあちゃん、よその、取ったらあかんよ」と言うと「いっつも、こない、言うねん」とケアマネさんに言いつけた。味方だと思ったんだ。もっとも、見知らぬ人でも、誰でも、味方につけたいらしいけれど。
 ケアマネさんも、ばあちゃんのことをつかみかねている。油断すると、いきなり「ぱちん」となぐったりするらしい。「何をする!」となぐりかえしてもらいたい。人をなめると、どうなるか、なんて、体で覚えなきゃ。
 ケアマネさんは「デイにいるばあちゃん」を見に行ったり、「ステイにいるばあちゃん」を見に行ったり、「家庭訪問」に来てくれたりする。今日は「ばあちゃんの畑に職場訪問」に来て、ばあちゃんを探ろうというわけだ。
 それだけではつまらないので、畑見学をしてもらった。大人でも、じゃがいもの花、なんて知らない人が多い。もうほとんどが散ってしまって、2つしか残っていなかった。