一人でいられない

 3時に帰ってきた。ばあちゃんがトイレに行ったすきに、かばんも手さげも外出着も片付けたのがいけなかったらしい。「かばんは?」と言う。「なんで、かばんがいるの?」と訊くと「今度、何時行くか、わからへん」と言う。「その日になったら、教えてあげる」と言うと、いったんは部屋にもどった。
 次に、雨もやみ加減で、傘を杖がわりにして、外に行きかけた。また診療所に行くと困るので、ひきとめた。
 それからは、トイレと部屋の往復だ。「何回もトイレに来たら、あかん」と言って、部屋に連れて行くと、また、台所に来て「ここにおってもよろしいか?」と言う。
 私が「部屋におり」と言うと「誰もおってない」 誰もいない、ってどういうこと?「ばあちゃんの部屋やから、誰もおらん、のがあたりまえ」と言っても、わからんらしい。
 誰かと一緒にいたいのだろうか? 
 私が台所にいて、「仕事してるから、じゃま。あっちに行き」と言うと、すぐに戻って来て「ここにおいてもろても、よろしいか?」
 5時になったので、知らん顔して、てんぷらをあげていると、ばあちゃんはテーブルについて、無言で新聞を広げている。読んでも、わからないと思う。次はおいてあったレシートを見ている。そのうち「ちょっと、お便所、行かしてもらいます」とことわって出て行く。
 私は思い違いをしていたのだろうか?今まで、ばあちゃんは夜になると、お泊り気分でたずねてくると思っていた。これは、デイサービス気分で、「誰かと一緒におりたい」のだろうか?毎日のように、デイサービスに行き、他人と一緒にいるのが普通、になっているのだろうか?一人では不安なのだろうか?
 家にいても不安、デイに行っても、ステイに行っても不安...かわいそうではある。