「せんど、見まへんな」

 お風呂からあがったばあちゃんは「ご飯、食べよぅか?」と言う。「もう食べたよ」と言っても、不満顔だ。重ねて「ご飯食べて、お風呂に入ったから、寝たらいいよ」と言うと「あんたが言うんやったら、食べたんやろ」と捨てぜりふを残して、一応、自分の部屋に行った。
 私と息子が食べていたら、やってきた。椅子に腰掛け、ニーッと笑って、「兄ちゃん、せんど、見まへんな」と言う。「せんど」って、このへんの言葉で「長い間」という意味だ。「長い間」のはず、ないでしょ。毎日、会う顔だ! 何を、おべんちゃら、言ってるの? とうふちくわを一切れ渡すと、持って部屋にもどった。何でもいいから、ちょっと持たせると、納得するんだよね。