「死なな、しょうがおまへん」とは、穏やかじゃない

 今日はばあちゃんを早く連れて帰った。家に着いたら、5時50分だった。早くかたづいて、お風呂もすんで寝てくれた。
 と、安心するのは早過ぎた。夫とご飯を食べていたら、ばあちゃんがやってきた。「あんじょう、忘れてしもて、しょうがおまへん」と言う。「どない言うたらよいか、わかりまへん」と言いながら、ばあちゃんの席に座った。「トマトやで」と言ってミニトマトが5個入った入れ物を渡した。食べながら「忘れてしもて」と言うので「忘れたら、お父ちゃんにまかせなさい」とメモを書く。「どない言うたらええか、わからへん」と言うので「何も言わなくてもよろしい」と書く。「そんなら、死なな、しょうがおまへん」とばあちゃんが飛躍する。「そうでっか、死になはれ」と私が言う。言う!だよ。これは書いてはいけません。書いたものを読んで記憶したら大変だ。耳で聞くだけなら、記憶はしない。
 夫が「今日は、つながっているなぁ」と言う。「脳の中の神経が、何かの拍子に、ピッとつながって、その瞬間だけ正気に戻る。また、離れて、宇宙人になる」はぁ、そんなもんかね?
 これ以上つながらないように、夫はさっさと部屋に戻った。私は知らんふりして、ばあちゃんに背を向け、食器洗いをする。ばあちゃんは「死にます!」と捨てせりふを残し、部屋に消えた。
 ばあちゃんは寝たり、起きたり、トイレに行ったり、寝ている枕もとの窓の障子を開けて、外の高速道のライトを見たりしている。疲れていない日はこんな調子だ。畑に1日いると、疲れて寝てくれるので、助かるが、そうそう毎日、畑ばかりしていると、また、飽きていやになるし...難しいねぇ。