テレビ

 お風呂のあと、ばあちゃんはテレビをつけている。そのまま寝てしまうんじゃないかな?
 突然、ばあちゃんが怒ってきた。「あれは、なんどいな?」「なに?見てあげるから、一緒に行こう」と言って、部屋に行く。こんなときは、テンションをあげないように静かに話す。テレビがついているのだ。目がさめたらテレビがついている、という状況だったのだろう。
「ばあちゃんが、つけたまま寝たのよ。消せばいいのよ。そんなことで、怒ることないのよ」と言うと「知らん!」「そんなことでおこらなくていい。『知らん』と言わずに『あ、忘れたわ』と言えば、笑って終われるでしょ」と言って無理矢理寝かした。
 また怒ってやってきて「わし、つけてへんで」と言う。しまった。普通なら、私ががーんと言うと、引っ込むのに、今日は違うようだ。何でも忘れるくせに、覚えている。火に油をそそいだかな。もう無視するしかない。ところがまた「わし、つけてへんで」と来て、テーブルの上のりんごを見るなり「それ、食おうか」??何よ、それ?結局、食べに来たわけか?
 トイレに入ったすきに、おやつを入れておいた。ばあちゃんはそれを持って部屋にもどる。そっと見に行くと、ばあちゃんはテレビの直前にすわりこんで、画面をみつめていた。ばあちゃんがこんな音量で聞こえるはずがない。ながめているだけだろう。髪が伸びて、鬼気迫るやまんばだ。明日は散髪に行こう。