熟柿

 干し柿を作ったとき、熟したのがあったので、家に持って帰っていた。ばあちゃんに食べさせようと思い、お皿に乗せてわたした。じっと見ている。「こうやって、皮をむく」とやって見せる。薄い皮は手でむけるのだ。「こんなん、食べたことないから、わかりません」と言う。まぁ、こんな大きな、みの柿の熟柿は普通は食べへんわねぇ。昔は「大柿」というのを熟柿にしていたから、もっと大きい。今は、大柿はドライアイスで渋をぬくのだろうか?
 あとで、見ると、ちょっと食べただけで、台所に返していた。「こんなん、置いてあったけど、知りまへんか?」と言う。「ばあちゃんが食べたんやから、残りはあとで、食べ」と言うと「いりません」「一人で食べたら、悪い」と言うことがくるくる変わる。「一人よ。ばあちゃん、一人よ。誰がいるの?」と訊くと「みんな、おる」「これから、来るかも知れん」と言う。それは「お泊り」だ。
 「こんなにあるよ」と大きな箱に並べたのを見せてみた。「いらないなら、捨てる」と言うと「もったいないから、食べる」と言う。ちょっと食べただけ。
 結局、夕方になって、食べてしまっていた。大きいから、おなかが冷えるか。あとは「甘党」の犬にやろう。