「誰もおらへん」

 私がちょっと外へ出ると、探しに来る。「ねえちゃん、おらへんか?」と夫に訊いて「誰のことや?」としかられていた。「娘は忘れたんか?」と言われていた。「ねえちゃん」と呼ばれるのは、姪であったり、近所の若いお嫁さんだったりで、確かに娘ではない。でも、驚くにはあたらない。そのちょっと前に、私は「おばちゃん、これ、何や?」と呼ばれていたのだ。「おばちゃん」は親戚ではない。「そこらの人」だ。