暖かい。大晦日だ。明日のお雑煮の大根と人参をとりに行かなければ...ばあちゃんをほって行くと、また、ややこしい。冷蔵庫に直行するだろう。連れて行こう。「畑に行くよ」と言うと「誰と行きます?」と訊く。一人では行けないらしい。私が歩きだすと、ついてきた。
 畑に着くと「隣組」または「小作人年貢無し」のおじさんが焚火をしながら作業中だった。ばあちゃんは黙っていない。「危ないことおまへんか?」と、言葉は柔らかいが、怒っている。「見て来たらええやんか」と言うと、監視に行く。長らくしゃべっていて、納得したのか、火のそばの草を引きはじめた。
 私は、大根・人参・ねぎ・白菜を取る。はずれているパオパオもとめなおす。それから「帰ろうか?」と誘いに行くと、ばあちゃんはさっさと立ち上がった。今までなら「そこまで」と言いながら、畝のはしっこを指さすのだが、さすが、寒いのは嫌いらしく、帰る気になった。そして、おじさんの車のドアを開けた。「違うよ。これはおじさんの車。ばあちゃんは歩いて帰るよ」と言うと「あ、そうでっか」と言ったが、不満らしかった。