農機具

 ばあちゃんはデイから帰っって普段着に着替えたのに、まだ「迎えに来るのんか?」と訊く。「来ないよ」と言っても「『待っとけ』言うてやった」と言う。ばあちゃんが「次はいつ?」と訊くから「○○日よ。待っていてね」と言ったのだ。最後の「待って」だけ記憶したのかな? 
 そのとき、玄関でピンポンが鳴った。「は〜い」と出たら、某農機具やさんだった。ばあちゃんは出て行って「迎えに来てくれたんか?」と訊く。農機具やさんの名前入りの軽トラックだが...「違うよ、農機具やさんよ」と言いながら、その人には「ばあちゃんは、車が来るとデイサービスと思うんですよ」と説明する。誰が来ても、認知症ばあちゃんを見せて、どんなものかを知ってもらうことにしている。セールスマンなら、それぐらいの知識を持ってくださいませ。
機械やさんは「これからは健康器具も扱うのです」と言う。「健康寝具はどうでしょうか?ぐっすり眠れますよ」そんなもので、ぐっすり寝ていたら、ばあちゃんが夜中に出て行っても気がつかないわ。と思っていると、ばあちゃんがまた「迎えに来てくれたんか?」と言う。「農機具やさんや。稲刈りの機械や」と言うと、機械やさんは、「それでは...」と言いながら帰ってしまった。呆けばあちゃんは要りませんか?研究すると面白いと思うけど、な。