デイサービスの見学

 見学に行った。デイサービスの部屋は2階にある。連絡帳のポケットに昼食後の薬を入れ忘れたときに、ときどき持って来ていたが、その頃はばあちゃんもまだまだしっかりしていたので、私の顔を見るなり「何の用や?」と言うので、渡すなりさっさと帰っていた。リクレーションの見学は初めてだ。
 天気予報どおりに、空が暗くなったと思うと、雷だ。でも、ガラスがぶ厚いのか、音があまり聞こえない。女性スタッフが3人と主任(男性)だった。利用者の皆さんは男性・女性あわせて10名。お昼ね中の人もいた。テレビで高校野球の観戦中の人もおられるし、思い思いにくつろいでいる時間らしかった。私は知り合いのおじさんと世間話をした。
 女性スタッフが「雷ですね」と言いながら「昔は雷のときは、どうしていたんですか?」と尋ねておられる。よそのおばあちゃんたちは、おとなしい。何か行ったようだが、聞こえにくい。スタッフが通訳しておられる。ばあちゃんの声が聞こえる。「私、ここに来さしてもろて、嬉しいわ。近所でも、来てる人、おません。私だけや」と言っている。「けっこぅなこっちゃ」と言っている。デイに来始めたころからの「おべんちゃら」は、まだ言えるようだ。ばあちゃんの繰り返しがしつこい。聞くといらいらする。他の人も、聞いていていらいらするだろうか?どうやら、ぼけ度はばあちゃんが一番深い。
 さて、テーブルを廊下に出して場所を作り、まずは体操をする。スタッフ一人が前に出て,
音楽をかけ、見本をするので、皆、見よう見真似でできるようだ。椅子に腰かけて、手足の体操だ。
 次に「輪渡し」をする。輪は紙を輪にしてテープを巻いたように見えた。自分の足にかけてもらい、隣りの人の足にかけて渡す。ばあちゃんはもらうなり、足をぴょんとはねあげて渡すので、速いが、受け損なう。まったく、ばあちゃんのすることには、容赦がない。というか、他人のことなど考える能力が失われているのだからしかたがない。
 次に布製の小さめのラグビーボールを2つ、出してきて、隣りの人に渡す。またも、ばあちゃんは受け取るなりぽんと渡すので、隣りの人の手をすり抜けて、落ちてしまった。まったく、何も考えないのでどうしようもない。考えられないか?
 本日のゲームは、そのラグビーボールを使ったボーリング。的は、大小の薄い箱を立てて、点数が書いてある。1点が2つ、あとは、3点、5点、10点が1つずつで、全部を倒すと20点になる。まずは練習。腰掛けたまま、やる。さて、本番。意外と難しい。ラグビーボールは丸くないので、転がるとどこへ飛ぶかわからない。当るも当らぬも運次第だ。実力には関係が無い。ばあちゃんは、ボールを立てて押さえてくれている主任に「放して」と言う。はしっこにいたじいちゃんが「蹴られるぞ」と言うところを見ると、ばあちゃんが何かをすると、乱暴と言うか、力任せで容赦が無い事を知っておられるのだろう。ばあちゃんは2つのボールを蹴飛ばして、偶然だろうが、19点獲得した。やはりスポーツ系は強いし、機嫌も良い。