つくし

 宅老所のみんなが畑に来た。最初に着いた車から降りたのは「水戸藩主の母上」だ。土手に行くとつくしが出ていた。取ってあげた。「ここにも出てるよ」と言って、生えているところを見せてあげた。まわりは大き目の草の中、小さいつくしが2本、出ている。
 母上は「生えてるの?」と訊く。何を不思議そうに思っているのかが、わからない。「なんで?」と訊いてみたら「一人、生えてるの?」と言う。はぁ〜ん...私が「この下に根があるのよ」と言うと「根っこがほうてるの?(地面の下を根が這うの意)それで子供が生まれるの?」と言われる。「あ、それが不思議だったの?やっと、わかった。そう、これが子供。下に根っこがあるの」「あ、植えたんでないのか?」「そう、植えてないよ」やっと納得してもらった様子で、繰り返し「これが子供か」と言っておられる。「これ、なに?」と訊くので「つくし」と言うと「これ、つくしか?食べられるの?」「食べられるよ。このはかまを取って、お湯でゆでて、しょうゆをかける」「これ、食べられるの?このまま?」「だめよ。ゆでてから、ね」「食べられるの?」...ずいぶん、気になるんだね。
 それでも、次の車で来られた「おくさま」にそのつくしをプレゼントしていた。
 雨が降ってきた。福祉センターのガレージで雨宿りさせてもらった。
 小やみになったので、また外に出た。
 田舎出身の「えりこさん」は失敗作の白菜を抜いては、包丁で根っこを切り取り、下の枯れた葉を取って、袋に詰めておられる。「ありがと...」と九州弁でお礼を言われたが...書き取れなくて忘れた...「失敗作の白菜」とは、植えた時期が遅くて、巻かぬまま、全部が「外葉」というわけで、青々として、しかも春なのでもう中心につぼみができている。つぼみはゆでて、外葉はたいて食べるか、いため物か...なんとかなるだろう。
 水菜もつぼみが出て花が咲きかけた。またまた「水戸藩主の母上」は「これを持って帰る」と言う。どうぞ、どうぞ、てんぷらにしたら、食べられるよ。スタッフの方が「あ、てんとう虫が転倒した!」と言われる。が、笑う人が...いない。
 母上は今度は畝の端に座り込んでいる。「どうしたの?」と訊くと「これ、たんぽぽ。持って帰る」と言う。「どうするの?」と訊くと「植えるの」といわれるので「それでは、掘ってあげる」と言って、ちびた鎌の先で掘り起こしてあげた。でもたんぽぽの根は深いので、途中で切れたけど、植えても、つくかな?わからんな。でも、やってみたらええやん。母上は「あ〜りがとさん! はーいはい」と節をつけて言う。写真をぱちり。
 無事、お帰りになりました。