黒い服

 朝6時だ。ばあちゃんがごそごそしている音が聞こえる。見に行くと、もう黒い服を出して着ている。黒いブラウス、黒いズボン、黒い上着、ベルトがわりに黒い紐。「ばあちゃん、どこ行くの?お葬式?」「いえ」と言う。まあ、そんなつもりはなく、たんすを開けたら目に入ったのだろう。
 パジャマはハンガーにかけてある。毛糸のでんちも出している。が、パンツをはいていない。毛糸のパンツにパッチだ。「パンツはどこ?」と訊いても「知らん」そこらに干してない。押入れにもみあたらない。薄い箱の中だった。シャツが入っている箱だ。パンツはもう乾いている。夜中におしっこして、ぬいで干した。朝「なんで、こんなとこにパンツ?」と、たまたま出した箱に入れ、押し入れになおしたわけだ。みつかってよかった。どこか見えない奥の方になおしていたら「なんで臭うの?」となるところだった。
 ばあちゃんは毎日「ななくさ行き」気分なのだろうな。