あぶらげ

 台所に鍵をつける前のこと。台所の冷蔵庫にはばあちゃんが食べてもよい物ばかりを入れて、他の物は座敷に置いてある冷蔵庫に隠していた。ところが、ばあちゃんは順番に部屋の戸を開けているうちにその冷蔵庫をみつけたらしい。古いもので、温度設定が狂ったのか、あまり冷えなくなっていた。
 長男が薄あげの袋を持って来た。「見てみ」と言う。冷凍庫に入れていたが、解けかかっている。袋が開いていて、1枚のはしっこがかじってある。「何枚入っていたんや?」と訊く。「4枚入りやけど、3枚しかないなあ」ばあちゃんが1枚を食べてしまって、2枚目ははしっこをかじったままなのだ。も〜う、ええかげんにせい。と言ってもわからんし。よう、おなか、こわさへんかったなぁ。