しかたない。午後は墓参りに行く。畑で弁慶草としきみを取って「墓参りよ」と言いながら歩く。墓は坂の上なので、かなりしんどい。横の運動場では、老人クラブの面々が、グランドゴルフをしておられた。ばあちゃんは「墓」を忘れているが、こぼれた落ち葉を拾ったり、上に生えている小さな草は引いてくれる。線香を渡し「南無阿弥陀仏と言うのんよ」と教える。
 「宮っ子」を配るついでに、親戚の家に行く。歩きながら「ほう〜、草、いっぱいやね」と言う。土手だもの、当たり前。「草があるからええのんよ。無かったら、崩れるわ」と教える。てっぺんの家に行く。ポストに「宮っ子」を入れて行く。道の下の池に金魚がいて、うちの池の金魚よりもずっと大きい。ばあちゃんは池を見下ろして「ほう〜、動いとるわ、赤いのん」と言う。私が「魚」と教えると「魚か?○○○○○○」と言う。ぷっと思わず、吹き出した。「な〜にが!」と思った瞬間、ばあちゃんが言ったせりふを忘れた。おもしろいこと、言ったのになぁ、思い出せなくて残念。「たいへんやなぁ」と言ったのだったかな?
 次々に配りながら歩いて、疲れてきたみたい。「どこまで行くのん?」と表情が険しくなってきた。親戚の家に着いた。おばちゃんはベッドでやすんでおられた。「よう、来てくれた」と言われた。ばあちゃんは横に座り「会えて嬉しいわ」とおべんちゃらを言う。おばちゃんが「ばあちゃんは賢い人やったから、ぼけても言うことが違うなぁ」と言う。「そやから、私が困るんやんか。おべんちゃんらが言えるから、ぼけてるように見えへんねん。なんにもわからへんのに」と言っておく。息子さんとお嫁さん、嫁いだ娘さんも来ていた。