見慣れた景色は無いみたい

 帰ることにした。家は道路の近くなので、帰るには坂道を登らねばならない。ばあちゃんは「こんな方、行って、どこ、行くのんどいな?」と言う。怒っている。離れて先に立って歩くとついて来るのだが、何度も何度も繰り返して言う。坂道を歩くのがしんどいのだ。
 帰りはてっぺんにもどらず、横に曲がって国道に出てから帰ることにする。信号まで来ると「だいじょうぶかな」と、ちょっと弱気のせりふに変わる。中国道を渡る橋に出る。ここはデイのお迎えの車に乗って通る道だ。ばあちゃんには「見慣れた景色」は無いのかしら? 天理さんまで来ると「いねるか?」と言っている。私は先に立ってどんどん歩く。池が見えると「けっこやなぁ」と言う。やっと家が見える。「うちの家、ここか? はっきりわからへん。あー、心配やな... ここやな」で、家に着いた。トイレに行って「昼寝」のメモを渡すと、大きな布団に入って寝てくれた。ああ、おつかれさん。